「奇跡の美声」King Gnu井口理がさらけ出す心の中 歌うこと、演じること、そして自意識の解放

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(写真:長田慶)

「歌うことも演じることも正直あんまり違いはないのかなって。今回の『ひとりぼっちじゃない』の撮影に入る1週間前ぐらいにフジロックに出演していたんですよ。そういった経験を通じて自分の中に、アーティストと役者という切り替えのスイッチがあったわけではなくて。なんて言うんですかね、フィールドは違うけど、やることは一緒だなと。ライブ感だったり表現方法や場所が違うだけで、歌うことも演じることも同じことだなっていうのは気づいたかもしれないですね」

そう語る井口だったが、歌っている自分と大きく違うことは、「自分のお芝居に手応えを感じたことは一度もなかった」という経験だった。井口は、大学時代に舞台上で自分の居場所を見つけられずに挫折を味わっていた。

全てを受け入れることで、逆境もプラスに変換できる

『ひとぼっちじゃない』で主役を務める際に、井口は半年間も伊藤監督とじっくりと作品や役作りについて話し合い、ロケハンにも帯同した。そこまで入れ込む理由を、「初主演ということもあり、怖かったんですよね。プレッシャーを感じるタイプなんで」と本音を語る井口は、映画に向けて演技のレッスンも受けていた。

そこで先生に言われた言葉が、重圧を背負っていた井口の視野を広げるキッカケとなった。

「レッスン中に芝居論というよりは、まずは“全てを受け入れること”を強く言われたんです。『自分にとって想定外のことが起きた時に“NO”とは言わないで、できるだけ受け入れて“YES”って言ったほうがいいですよ』って。

それを聞いた瞬間にこの考え方は何においても言えることだと思ったんです。例えば、ライブで歌詞が飛んだりとか機材の音が出なくなったりした時にそれすらも楽しめて表現にできたら、逆にプラスにできるじゃないですか。

(C) 2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

だから今回の役作りでも、あんまり僕は決め込んでいかなかったんです。ある種、その場で作られていったススメ像に逆らわないというか。もちろん撮影に入る前は、すごく考えましたよ。だけど、日常でも対人する誰かと交わることで自分が作られていくことだってあるじゃないですか。なので割と流動的に受け身でやることを重要視してやってましたね」

次ページ「感情を整理する」この経験は、歌にも活かされている
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