「奇跡の美声」King Gnu井口理がさらけ出す心の中 歌うこと、演じること、そして自意識の解放

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「『まずは小説を読んでほしい』と言われて本を読んだんです。読みながら、『なんで僕にオファーしてくれたんだろう?』と主人公のススメを自分と重ねていきました。それで読んでいくうちに、『このキャラクターは自分が演じたい』という思いが強くなったんです」

理由は、主人公のススメが持つ強い自意識が、井口と強く重なったからだった。

(写真:長田慶)

「自分が生きてきた中で駆り立てられてきた自意識を、落とし込められるんじゃないかと。『ひとりぼっちじゃない』の原作を読むにつれて、そんな感情が芽生えました。これは今までにない自分を表現できるかもしれない、と」

アーティストとして躍進を遂げる井口は、自身の新たなる可能性と向き合っていた。

表現者としての挑戦の日々、それを乗り越えた先にどんな境地があったのか。そこから見えてきた井口の「今」を伝える。

“演じることと、歌うこと”

井口の家族は映画好きで、兄弟が劇団に所属していたこともあり、芝居や音楽は幼い頃から身近なものだった。その後、井口は東京藝術大学の声楽科に入学したが、演劇に対しても、「いつかやってみたい」という気持ちを抱いていたという。

そして、井口が初めて演劇の世界に踏み入れたのは、大学時代に参加した学園祭のミュージカルだった。その後も誘われて舞台に立つなど経験を重ねる。

ボーカリストとしてのイメージが強い井口だが、“演じることと、歌うこと”をどのように位置づけて表現しているのか。

「音楽をやってる時と共通しているのは、僕はナマモノというか、ライブしてる時が好きなんですね。例えば、お芝居も自分1人で演じるのが好きというよりも誰かと対話をして作りあげていきたい。共演者と一緒にセリフを言い合ったり、そこで生まれる熱量や化学反応が音楽やライブをやってる時と近い感覚。そういったコミュニケーションから生まれるエネルギーの流れを味わい、自分が投影する表現によって相手が変化したりするのが好きなんです」

自分たちが表現したパフォーマンスに対して観客が一喜一憂する。エンターテインメントの本質を井口は、心から楽しんでいた。それは、こんな言葉からもうかがえる。

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