「もののけ姫」が描いた「結果より過程」の哲学 目的なく「顔を出す」行為に支えられている社会

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「そもそも、周りを見れば、各々の過酷で厳しい状況であっても、なんとか闇落ちせずに、憎悪に呑み込まれずに必死に『踏みとどまっている』男性たちは無数に存在するのだ。彼らのそうした日々の地道な努力はー繰り返すがそこに他者との比較や優劣を付けることなくーもっと肯定され、尊敬されていいものではないか。
解放的で非暴力的に生きようと日々努力し続けていること、それはそのまま立派でまっとうであり、尊厳に満ちたことなのだ。『男らしい』のではない。『人間らしい』と言いたいのだ。『弱者男性』として『人間らしい』のだ。」
(杉田俊介『男がつらい! 資本主義社会の「弱者男性」論』ワニブックス、2022年、57-58頁)

確かに現代社会において「決めない」ことは、「男らしくない」行為かもしれません。ただ、アシタカの素晴らしい点は「曇りなき眼で見定めよう」と最後まで試みたことだといえます。また「曇りなき眼」とは、「特別に綺麗な心を持って」という耽美的な表現ではなく、実際に現場に足を運び、虚心坦懐にその眼で見るという実践的な意味だと思うのです

つまり、誰かに聞いた話を鵜呑みにせず、自分の目で見て自分の頭で判断しなさいよ、というごく一般的な、でも面倒くさくなると怠ってしまうことを意味しているのだと考えています。そして、そのように現場に足を運ぶことこそ、「顔を出す」ことなのではないか。

若い人たちの直感こそ大事にしなければならない

どうしても僕たちは、「物事を決める」ことに重きを置きがちです。しかし、大事なことは結果ではなく、その過程です。なぜならその過程がちゃんとしていれば、自ずと結果はついてくるからです。

なぜ結果ばかりを求めてしまうのかというと、それはこの世のどこかに「正しい答え」があると思っているからです。できるだけコストを下げて大量生産し、なるべく利潤を上げ続けなければならない。この目的のためには手段は選ばない。これが近代という時代の価値観でした。

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