日本人が「サバ缶」の品薄に苦しむ"本当の理由" 水揚げしたサバの半数近くが食用にならない

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サバ缶に何が起こっているのか(写真:筆者提供)

水揚げの減少でサバ缶の原料が不足し、一部メーカーでサバ缶の休売が始まりました。販売を続けるメーカーでも、サバの原料不足に直面しているのは同様です。脂がのった大きめのサイズを確保するのは特に難しく、小型のサバで何とか供給を続けている状況です。

小型のサバでも水揚げ量の減少で、魚価が上がっています。さらに円安でサバの輸出価格が上昇して輸出に回りやすくなり、ますます缶詰向けのサバ確保が困難になっています。

しかしながら、この状態は長年にわたる資源管理の問題で、起こるべくして起こっていると言わざるをえません。またサバだけではなく、スルメイカ、サンマといった魚種でも、資源量減少による原料の供給不足が起きています。缶詰向けだけでなく、加工品に使用する国産原料の調達は、資源量の減少で年々難しくなっています。

なぜサバ缶が不足するのか?

これまで何度かサバ缶ブームが起きています。データ分析すると、ブームにおける資源面の背景には、皮肉にも2011年3月に起きた東日本大震災が深く影響していることがわかります。

三陸のサバ(写真:筆者提供)

3~6月頃の産卵期にかけてのマサバ漁(マサバとゴマサバは混獲在り)が、放射性物質による汚染の懸念から、震災の年はほとんど行われませんでした。このためマサバが産卵期の漁獲を逃れて大量に産卵できたのです。

そして2011年に生まれたマサバが、2013年から成熟して産卵を始め、その年に生まれたマサバがたくさん生き残り(卓越級群)、資源量を増やし続ける好循環が生まれたのです。

また、海の栄養分減少によるためか、サバの成長が遅くなる傾向が強まりました。このため、鮮魚や塩サバなどに向けられるサイズになかなか成長せず、ちょうど缶詰に向く300~400g前後のサバの組成が中心になる年が続きました。結果として、脂がのったマサバがたくさん缶詰向けに利用でき、おいしいのでブームになるのとあいまって消費者にも受け入れられてきたのです。

震災後に一時的に増えていたマサバの資源が、資源管理の機能不足で再び悪化した場合は、未来への大きなチャンスロスとなります。一時的に資源が急増したものの、すでに震災以前の資源状態に戻ってしまった、マダラ資源のような状態にならないことを願いたいところです。

資源が大きく減少してしまえば、原料がなくなりサバ缶は不足してしまいます。ノルウェーサバでは脂がありすぎて、味噌煮などの味付け用には向いても、需要が最も多い水煮にはあまり向きません。水煮には国産原料が不可欠です。

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