日本人が「サバ缶」の品薄に苦しむ"本当の理由" 水揚げしたサバの半数近くが食用にならない

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今回のサバ缶の問題をめぐり「小さいサバが多い」「記録的な不漁」「イワシの大群がサバを追い出している」「マイワシがサバを底のほうに追いやっている」「サバは海にいるが獲れない」などといった報道がされています。ところが、それらには、肝心の水産資源管理の問題や乱獲といった指摘はほぼ見当たりません。

「小さいサバが多い」は、サバが成長する前に一網打尽にしてしまう仕組みのため大きくなれないのです。これを「成長乱獲」というのですが、サバに限らず日本ではさまざまな魚種で起きています。

サバの寿命は7~8年程度で最長で11歳という記録もあるそうです。しかし実際には大半が小さいうちに漁獲されてしまいます。このため7~8歳になるサバは、ほとんど漁獲されてしまっていないのです。

資源管理が進んでいる大西洋と進んでいない日本近海では、同じ魚種でも魚の大きさや年齢が異なります。日本近海では海に泳いでいるサバでもクロマグロでも、イカナゴのような小さな魚でも、小さいうちから獲ってしまうので大きな魚が少なく、若い小さな魚が多いのです。産卵する親魚が少ないので、資源の持続性が困難になっているのです。

「獲りすぎてしまったから資源が減り、漁獲量が減少した」という本当の理由は、なかなか出てきません。このため効果がある対策はなく、最後はサンマやスルメイカなどと同じ「大漁祈願」という効果が期待できない非科学的なことに頼ってしまうのです。

データでわかるサバ資源の無駄遣い

上の表は、2021年のサバ類の用途内訳です。46%ものサバ(マサバ・ゴマサバ)が食用とならず、養殖のエサになっています。2021年度のサバ類の水揚げ量は約43万トンでしたので、そのうちの20万トンにも上る計算になります。

さらに同年のサバ輸出量のうち、日本では食用に向かない小さなサバがアフリカ向けに10万トン輸出されています。つまり日本の食用には向かない30万トンものサバが、水揚げされているということなのです。

さらに言えば、これらのサバは大半が小型ですので、数量だけでなく、すさまじい尾数です。このため、資源量に与える悪影響は測りしれません。

日本向けも含む同年のノルウェーサバ漁獲量も約30万トンでした。しかしながら、日本の非食用向けの30万トンの水揚げ量(食用も含めると43万トン)と、食用に向かない小さなサバは漁獲せず99%が食用であるノルウェーとでは、その用途も未来も含め全然違うのです。

(外部配信先ではランキングやグラフ・図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

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