女性の記者だからではなく、山田奈々だから話をしてくれるように、私という人間そのものを、良い面も悪い面も含めて本質を見てほしい、そして、本質を見てもらえるだけの魅力的な記者に、人間になりたいと思わされました。
NOの数=自分の価値ではない
良い化粧品を作ってもなかなか店頭に置いてもらえない、インターネット通販で販売を開始しても思うように売れない。
投資家から容姿を否定されただけでなく、ビジネスにおいても数えきれないほどのNOを突きつけられてきたジェイミーの姿は、取材でNOと言われてきた自分の姿に嫌と言っていいほど重なって見えました。
こんなに一生懸命説明してもインタビューに応じてくれない。
何度足繁く会いに行っても本当のことを教えてはくれない。
直接的でわかりやすいNOもあれば、他社のライバル記者に先に重要なニュースの記事を書かれてしまうことで間接的に(けれど打撃は大きな)NOを食らうこともあります。
頑張れば何だってできるはずだと信じていた子どもの頃。大人になるにつれて、いくら頑張ってもできないことがあると知った時の、あの絶望感のようなものを、頑張れば頑張るほど、毎日のように味わうことになりました。
当時、不正会計処理の発覚を発端に、経営危機に陥っていた大手電機メーカー、東芝の取材を担当していた私は、他社の記者との熾烈な取材競争で負け続け、怖くて取材先に質問できなくなっていました。
「これを聞いて、答えてもらえなかったらどうしよう」
そんな恐怖心のほうが先に立ち、質問すること自体が億劫になっていた、私の心の中を見透かした経営幹部がいました。
「答えるかどうかを決めるのは私ですが、聞くかどうかを決めるのはあなたです」
当たり障りのないことばかりを聞く私に、聞くべきことを聞くのがあなたの仕事でしょうと背中を強く押してくれた、その人の言葉を今でも大切にしています。
求めなければ、NOと言われることはない。けれど、YESと言ってもらえることもない。
つらいときに思い返すと前向きな気持ちになれますが、それでも時々、NOが怖い、NOを食らうのが嫌だと思う時は今でもあります。
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