「役所勤めなら安泰か」公務員の出世と身の処し方 エリートコース官房系と事業系は何が違うのか

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官房系職場の職員は、どうしても上司や役所の中枢にいる職員の目に触れることになります。このため、この官房系の職場でも活躍できれば、さらに上に引き上げてくれることになるわけです。反対に、「この職員は、実際にはたいしたことない」と判断されれば、次の人事異動で優遇されることは、まずないでしょう。

こう見てくると、官房系職場に行くことが出世にとって有利であることは間違いありません。しかし、事業系職場ではダメなのかというと、決してそんなことはありません。

事業系職場は、官房系職場以上に困難な課題があることが少なくないからです。言い方は悪いのですが、官房系職場の業務は、ある意味ではルーティンです。総務、人事、企画、財政も、1年間の作業スケジュールを考えると、毎年大きくは変わりません。ただ、役所の全般的な取りまとめを行っているため、何となく役所の中枢的存在のように見え、事業系職場よりも一段上に感じるのです。

事業系職場にもチャンスあり

しかし、事業系職場は、まさに住民サービスの最前線です。このため、住民票の交付などで来庁する住民の方はもちろんのこと、町会・自治会の役員、NPOやボランティア団体、事業者、また「〇〇に反対する会」などの任意団体など、多くの住民や関係者と会うこととなり、それらの人々と交渉や利害調整を行っていく必要があるのです。

また、地方分権や昨今の新型コロナウイルス感染症などの状況もあり、国の法令や制度なども頻繁に変わりますので、それに合わせてサービス内容も見直していかねばなりません。

その意味では、官房系職場よりも業務は変化に富んでおり、また業務範囲も多岐にわたります。こうしたことから、大きな課題を抱える事業系職場で活躍すれば、やはり、その職員の評価は非常に高くなります。このため、「官房系職場でなければ、出世できない」ということはないのです。

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ちなみに、公務員生活を長いスパンで考えると、どんなに優秀な職員であっても官房系職場にしか在籍しないということは、基本的にありません。そうした固定化した人事を行ってしまうと、以前にも触れたように、不正が起きやすくなってしまう、ゼネラリストとして養成できない、などのデメリットが生じてしまうからです。また、そうした特定の職員のみ特別扱いすると、他の職員や職員団体からクレームが来てしまうでしょう。

仮に、在職期間を30年として、4年に1回異動すると考えると、8カ所の職場に在籍することになります。最初の配属先は別としても、残り7カ所をすべて官房系職場に在籍させることは、人事当局からしても困難なのです。一方で、8カ所すべて事業系職場という職員は存在します。

話を戻すと、官房系職場は出世に有利な職場と言えますが、在籍できたからといって安泰ではなく、また事業系職場が必ずしも不利とは言えない、ということがおわかりいただけたかと思います。

秋田 将人 著作家

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あきた まさと / Masato Akita

著作家。30年以上、自治体に勤務し、定年前に管理職として退職。在職中は、福祉・教育・防災などの現場から、人事・財政・議会などの官房系まで幅広く勤務。退職後は、書籍執筆、研修講師などを通じて、全国の公務員や自治体を応援する活動を行っている。また、別名義でWEBライター・ブックライターを行うなど、活動の幅も広げている。

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