セレブを狙い撃つマンション規約改定の衝撃 紛糾した「コミュニティ活動条項削除」の意味

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タワーマンションは下層と上層での所得格差が大きい(写真:チビタム / Imasia)

3年以上も紛糾していた「マンション標準管理規約」の改定が今年6月にも実施される見通しとなった。マンション管理組合やマンション管理業界からの反対を押し切って国土交通省の検討会は3月末に報告書をまとめ、近くパブリックコメントを実施する。

マンション標準管理規約は、分譲マンションなどの区分所有建物を管理組合で管理・利用するために定めた規約のガイドライン。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では、同法に基づいてマンションごとに規約を定められるとしており、国交省では1982年に「中高層共同住宅標準管理規約」を制定し普及を図ってきた。あくまでも標準モデルなので準拠することが義務付けられているわけではないが、マンション管理での法的トラブルなどを回避するための重要な判断指針となっている。

検討会はなぜ条項削除に固執したか

今回の改定をめぐって最大の争点となったのは、マンション管理組合の業務から「コミュニティ活動条項」を削除すること。良好なコミュニティが形成されているマンションは「暮らしやすく資産価値も高い」と言われるだけに、なぜ検討会が条項削除に固執したのか。いまだに判然としない。「新たに導入される議決権の価値割合を根拠に、超高層マンション上層部の高額物件に住む富裕層に対する相続税などの課税強化を目論んでいるためでは?」との見方も出ている。

国交省が福井秀夫・政策研究大学院大学教授を座長に「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」を立ち上げたのは2012年1月だ。役所の検討会といえば、せいぜい半年で結論が出されるのが通例だが、今回は異例の展開となった。

当初は月1回のペースで順調に9回の会合が開催された。しかし、事務局が示した見直し案に対して、区分所有者で組織するマンション管理組合、マンション管理組合を助言するマンション管理士、管理業務を請け負うマンション管理会社の団体がすべて反対を表明したため2012年8月の会合を最後に審議が中断。2年半も音沙汰なしだった検討会が今年2月下旬に突然、再開され、わずか1カ月で報告書がまとめられた。

最終会合でも、オブザーバーのマンション管理業協会が、コミュニティ活動条項削除に反対意見を述べた。その10日ほど前に、同協会では後期高齢者が急増する「2025年問題」を踏まえ、将来のマンション管理について学識経験者も加えて検討してきた「マンション2025ビジョン懇談会」の提言を公表。高齢者の見守りなどの課題に対応するためマンション内で多世代型コミュニティの育成の場と機会を提供する必要性を訴えた。いまも国交省が進める見直しに納得している様子はない。

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