セレブを狙い撃つマンション規約改定の衝撃 紛糾した「コミュニティ活動条項削除」の意味
マンション管理の重要性は、ストック戸数の増加とともに、1995年の阪神淡路大震災で被災したマンションの建替え問題などを通じて高まってきた。国交省では2001年にマンション管理適正化法、2002年にはマンション建替え円滑化法を制定。2003年の区分所有法改正のあと、2004年には名称をマンション管理標準規約に変更して大幅な改定を行った。この時に日常的なマンション内トラブルの未然防止や大規模修繕工事の円滑化にプラスになるとして、管理組合の業務として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」という条項が加えられた。
その後も東日本大震災などを通じてコミュニティ形成が重要との認識は高まっていたはずだが、わずか10年でなぜ条項が削除されることになったのか。管理組合がコミュニティ活動を行うことは、任意加入の自治会への強制加入につながり、管理費から自治会費を支払うことは目的外支出で違法との簡易裁判所での判例が出ていることを理由に挙げる。つまりコミュニティ活動が、マンション内の内紛や訴訟リスクにつながるとの認識で、実際にマンション管理の現場で活動している管理組合や管理会社との考え方と真っ向から対立しているわけだ。
第三者管理と価値割合の課題
今回の管理ルールの見直しは、コミュニティ活動条項が主題ではなく、大きく2つの課題が浮上していた。一つはマンション管理組合の役員に、区分所有者以外の外部の専門家が就任する「第三者管理」を導入するかどうか。もう一つは、区分所有法では総会の議決権は原則として「専有面積割合」とされているが、新たにマンションの財産価値に応じた「価値割合」を加えるかどうかだ。
第三者管理は、分譲マンションの居住者の高齢化や賃貸化が進み、管理組合の役員の成り手不足が深刻化、マンション管理や運営にも支障が出る懸念があることへの対応措置。報告書では外部の専門家の適格性の担保、利益相反取引の防止、業務執行のチェック体制などを整えたうえで活用を認めた。
議決権の価値割合は、マンションの高層化・大型化によって同一マンション内で財産価値が大きく異なる住戸が生じたことへの対応だ。専有部分面積に応じた「専有面積割合」や「一住戸一議決権」という従来の方式は各住戸が比較的均質な場合を想定しており、ここ10年間に急増している超高層マンションでの合意形成の円滑化を図るため「価値割合」が加えられることになった。
しかし、戸建て住宅が中心の自治会や町内会などコミュニティでの合意形成で、住宅の面積割合や価値割合で議決権に格差が生じることはない。1人1票、1世帯1票が原則である。マンションでも従来は面積や間取りも均質な物件が多く、1住戸1議決権が大半を占める。超高層マンションでも、筆者が取材した50階以上の物件では管理費・修繕費は専有面積割合だが、総会の議決権は1住戸1議決権だった。ご近所付き合いなどのコミュニティ活動を考えると、やはり議決権に格差を付けにくいのだろう。
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