セレブを狙い撃つマンション規約改定の衝撃 紛糾した「コミュニティ活動条項削除」の意味

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国交省がコミュニティ活動条項の削除にこだわる背景には、議決権の価値割合方式を導入しやすい環境を整えたいとの配慮が働いているためではないか。コミュニティ活動条項がなくなれば、マンションを共有財産として経済合理性に基づいて管理しやすくなるのと同時に、資産評価も財産価値に基づいて算定する根拠となるからだ。

区分所有法では、議決権割合に基づいて区分所有者の権利も定められている。敷地の持ち分も議決権割合によって決められ、固定資産税の算定はマンションの敷地を住戸数で均等に割って課税する仕組みとなっている。相続税の資産評価も敷地を専有面積で割って計算されている。

超高層マンションは相続税対策に

今年1月から相続税の基礎控除額が減額され、相続税の課税強化が図られたが、相続税対策として富裕層を中心に人気なのが超高層マンション上層部の高額物件だ。相続税対策の基本は相続税の対象となる財産の資産評価額をいかに圧縮するか。その対策として超高層マンションの購入はうってつけなのだ。

「物件によって圧縮効果は異なるが、平均してマンション価格の半分。中には3分の1に圧縮できたケースもあった。それが超高層マンション上層部が人気の秘密。ただ国税当局が金持ち優遇とも言える相続税対策をいつまでも認めてくれるかどうかは危惧している」と、不動産の相続問題に詳しい税理士は話す。国交省幹部も「資産評価の見直しという話はまだ聞いていない。価値割合方式がある程度普及してからではないか」と課税強化を否定しない。

超高層マンションは、最上層階と下層階では価格が4~5倍違う物件も珍しくない。当然、所得階層も大きく異なり、格差のある居住者が同じマンションの住民として合意形成を図るのは無理があるとの声を聞く。管理費・修繕積立金の金額も基本的に専有面積割合なので、高所得の居住者には問題ない金額でも、低所得の居住者には負担が重く、滞納問題が生じやすい原因とも言われる。もし大規模修繕工事で追加費用が必要になったとしても合意形成は容易でない。

今回の報告書には、「議決権に価値割合を導入する場合でも管理費・修繕積立金の設定は従来通りに専有面積割合で良い」という一文が入れられた。大規模修繕工事の費用を価値割合の議決権で決めて、各住戸の負担は専有面積割合というやり方で、本当に円滑なマンション管理ができるのか。今回のマンション標準管理規約の改定が及ぼす影響は、予想以上に各方面へと広がっていくことになりそうだ。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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