もうけの仕組み|鉄道/空運 鉄道は固定費が重い、空運は回復道半ば

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鉄道|固定費重く採算が急悪化

鉄道「もうけの仕組み」図解

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鉄道運行に伴う費用を固定費と変動費に分けると、固定費の比率が圧倒的に高い。

固定費の内訳は運転士や車掌らの人件費、安全運行のための保守・点検費用、車両や駅設備の保有によって発生する減価償却費など。これらの費用は乗客数の増減にかかわらずほぼ一定だ。

変動費の代表例は電気代などの動力費である。列車の運行本数を減らせば動力費は減らせるが、費用全体に占める動力費の割合は限定的にすぎない。

多くの鉄道会社の中で、コロナ禍によって最も打撃を受けた1社がJR東海だ。

同社は売上高の大半を東海道新幹線が占めるが、コロナ禍で新幹線を使った出張需要や観光需要が激減。2020年度の旅客運輸収入は19年度比で3分の1に、21年度も19年度比で半分以下にとどまった。

一方、費用は削減余地が乏しく1割程度しか減らせていない。

JR東日本や東急といった会社も旅客運輸収入は大きく落ち込んだが、コロナ禍の影響を受けにくい不動産事業の比重が高く、経営をある程度下支えした。

リニア中央新幹線の建設に多額の資金を投じるJR東海は他社のように事業を多角化する余裕がないのが実情。利益好転には、コロナ禍収束による乗客数増加が欠かせない。

空運|需要好転でも利益回復は遠い

全国旅行支援などによる国内旅行客の増加に加え、インバウンド客がじわりと復活している。国内最大手のANAホールディングスが2月2日に開示した決算では、売上高1兆2586億円(前年同期は7380億円)、営業利益989億円(同1158億円の営業損失)と大幅に回復。同日に公開された日本航空(JAL)の決算も同様の傾向だった。

だが、今後に目をやると不安要素が浮かんでくる。第1にはコスト構造の変化だ。運航に不可欠な燃油費用がウクライナ問題などの影響で増大している。

客層の変化も懸念要素だ。航空各社にとってもうけのいい乗客は出張利用のビジネス客。直前予約が多いため、旅行や帰省のレジャー客と比べて単価が高い。そのもうけの源泉が、オンライン会議の浸透などによって減少している。

インバウンドが回復すれば、売り上げはコロナ前水準にまで回復することが予想される。コスト抑制が今後の浮沈のカギとなりそうだ。

鉄道、空運業界の地図は、「業界地図デジタル」でご覧いただけます。
大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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