「5類移行」で暗転する、病院経営の収益構造 コロナ体制からの転換で、経営難が続出!?

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政府は新型コロナの疑いがある患者の外来診療を行った場合に1日250点の加算をつけるなど、コロナ患者の診療を促す措置を設けていた。この特例措置は条件付きで今年3月まで延長されているが、その後の延長については明らかになっていない。これも5類化によってなくなる可能性がある。

コロナ対応への補助が見直される一方で、医療現場ではコロナをインフルエンザと同様に扱うことについての不安が高まっている。5類化によって医療機関がコロナ対策をどれだけ軽減できるかなどの指針は、まだ出ていない。しかし、感染力の高い現状ではそれなりの対策コストがかかることが予想されるため、仮に補助がなくなるとすれば病院の負担は大きくなる。

資金繰り難での身売りも

新型コロナは現在、株の変異やワクチン接種の普及などによって、発生当初と比べて重症化率や致死率は低下傾向にある。しかし第7波や第8波では、経済活動の再開に伴って感染者数自体が増加したことにより、基礎疾患のある高齢者で死者が増えるという負の側面も可視化された。今後5類化でも同様の事態が想定されるため、医療機関は警戒を強めている。

高齢の入院患者は認知症を発症している場合も多く、一般の患者以上に看護師が必要になる。手厚い医療を実現するためにも、加算による医療機関へのインセンティブは当面求められるだろう。

日本病院会などによる調査では、19年と比較した患者数は22年で約1割減少した状態で、コロナ禍前の状態には戻り切っていない。5類化以降は、コロナ以外の患者の外来や入院の水準を戻せるかがカギとなる。3年もの間コロナ対応を続けてきた病院では、医療従事者の再研修も必要となりそうだ。

今後医療機関では、コロナの感染拡大初期に福祉医療機構が行った貸し付けの返済も到来する。補助金が減り、収入が安定しない中で、返済に苦慮する病院も増えるとみられる。関西を中心に複数の病院を運営する医療グループの経営者は、「買収してくれないかという身売りの話がポツポツ出始めた」と話す。コロナ後の生き残りを見据えた動きはすでに始まっている。

「業界地図デジタル」では「病院」のページをご覧いただけます。
兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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