<社会構造やナニーの姿勢に不安>
お金を出せば8時から18時まで子どもを預かってもらえるのですが、べらぼうに高いお金を出して預けるので、そこまでして続けたい仕事じゃないと、モチベーションが続きません。実際、ビジネススクールの同級生で同じ頃に子どもを産んだ米国人の友人2人は、ともに仕事にそこまでの情熱が持てず仕事を辞めました。
また、高いお金を出した先の保育園やベビーシッターとして子どもの世話をするのは、移民の人たちが多く、自分の子どもを祖母などに預けて、お金のためにほかの家の子どもを世話している様子をみると、そんな社会構造に対しても非常に違和感を覚えるし、現実問題として子どもをちゃんと見てくれるのかも不安になります。
仕事で米国人の家庭をよく訪問しますが、キャリアを積んでいるお母さんは、ほぼもれなく家にナニーがいます。階級社会の格差を利用して子育てを外注しつつ、かつ会社の仕事を男女ともに調整して、ギリギリで成り立っている家庭をみると、これから先が不安です。
結局、ナニーはどうなのか?
日本でも外国人ベビーシッターが仕事と育児の両立問題を解決するのではないかという議論がたびたび起こりますが、Fさんからは次のような目撃証言も。
<子どもの心の発達という点では集団生活の方が安心と感じる>
公園で見かけるナニーさんたちは、ヒスパニック系がほとんど。あまりいい印象はないです。たとえば、1~2歳の双子ちゃんを遊ばせているあるナニーは、何時間もスマホをいじっていて、確かに見てはいるけれど、基本的に放置。ほかのナニー仲間が来ると自国語で延々とおしゃべりして時間を潰しているだけです。
この年齢だと子どもからは様子は聞き出せないし、長時間一緒にいればなつくので、親は信頼しているようでした。もちろん愛情をもって語りかけている例も見ましたが、正直モヤモヤは残り、心の発達という点では集団生活の方が安心かなと思いました。
一方、日本のように「母親たるもの、かくあるべき」という社会規範が強くなく、子育ての仕方は多様で、Dさんはそれが気に入っていると言います。
<ママ同士のバックグラウンドが違うため、競争心が生まれず気楽>
ニューヨークでは、子育てのやり方は自由です。正解はないんです。その分、自己責任で、悩むことも多いですが、自分たちのやっている子育て方式に口を出されることはまずありません。
私の住んでいる地域は特に、外国人も多いためか、子育ての仕方も人それぞれまったく違います。育児も家事も一手に担う専業主婦のお母さんもいれば、専業主婦だけど平日は毎日ナニーやハウスキーパーを雇っているお母さん、フルタイムのお母さんでナニーを活用しているお母さんもいれば、そうじゃないお母さんもいる、まさに多種多様。
でも冷徹な個人主義とはまた違い、お互い助け合うこともしょっちゅうです。私はしょっちゅう、ママ友に頼んで、こどもを見てもらっていたりしました。逆もしかり。あまりにもみんなバックグラウンドが違うので、お互い競争心も生まれずその分気楽に暮らせている気がしています。
ヨーロッパやほかのアジア諸国はまた別の様相ですが、どこの国も一長一短という面があるでしょう。漠然と「日本はだめ」と嘆くだけではなく、海外の事例からその背景やほころびも含めて見たうえで、よい面を取り入れていけるといいですね。
これから子連れでも留学や赴任を考えている方にも、参考になったのではないでしょうか。
次回も引き続き、海外レポート。次回は子どもにとっての環境、海外在住ママゆえの悩みについて、米国、タイ、ドイツなどの事例を見ていきたいと思います!
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とうだいままもん / Todai mamamon
団体概要:2011年のホームカミングデーをきっかけに発足した東大卒業生の同窓組織。Facebookグループには0歳~小中学生の子を持つ母親を中心に、20~50代の東大卒業生560人が登録。「子育て中だが、会社内にはまだロールモデルが少ない」などの悩みを、同じ大学出身という共通基盤の下にFacebookのグループページ(非公開)で共有したり、オフ会、勉強会などで情報交換している。立ち上げの経緯はこちら(リンク)。
立ち上げ人:中野円佳。2007年、東京大学教育学部卒。『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)著者。同著では制度が整ってからも総合職女性が活躍しづらい社会構造を指摘。高学歴女性の抱えるジレンマについて触れている。
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