薬剤師が解説「症状別・花粉症市販薬」を選ぶコツ 眠くならない薬のほか、点鼻薬、目薬などを紹介

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花粉症に用いる市販の点鼻薬には、前述した「鼻噴霧用ステロイド薬」のほか、「血管収縮薬」があります。

「鼻噴霧用ステロイド薬」(表3)は、使い始めてからおよそ1~2日で効果が見られます。定期的に使用することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3症状のいずれにも高い効果を発揮します。しかも、鼻噴霧用ステロイド薬のなかには、鼻症状だけではなく「眼の症状」にも効果があるという報告もみられます。気になる副作用についても、鼻噴霧用ステロイド薬には第2世代抗ヒスタミン薬とは異なり、眠気を起こす成分が含まれていないので眠くなる心配もありません。

一方の「血管収縮薬」の点鼻薬は使うと速やかに鼻づまりが改善します。そのためつい連用しがちですが、使い続けると、この薬が原因となって「薬剤性鼻炎(血管収縮成分を長く使うことでかえって粘膜が腫れて鼻づまり症状などを起こすもの)」を起こすおそれがあります。使用は必要なときのみとし、1~2週間にとどめるようにしましょう。

眼の症状に使える市販薬の選び方

花粉症の眼の症状に用いる市販の点眼薬には「点眼用抗ヒスタミン薬」「点眼用遊離抑制薬」があります(下の表)。

「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版」を見てみると、「点眼用抗ヒスタミン薬」「点眼用遊離抑制薬」は同列に選択肢として挙げられているので、価格、ドラッグストアの品揃えなどをみて手に入れやすいものを選ぶと良いでしょう。

なお、ソフトコンタクトレンズをしている人は、目薬の防腐剤に注意してください。

「ベンザルコニウム」という防腐剤は、ソフトコンタクトレンズに吸着される性質があります。レンズをつけたまま点眼すると、成分と角膜が接触し続けることで角膜炎を起こすおそれがあります。少し面倒ですが、点眼の際にはレンズをいったん外して、点眼後10分以上経ってから装着するようにしましょう。

ドラッグストアには病院で処方してもらうのと同じ成分の市販薬が数多くあります。ただし、現在治療中の病気によっては、市販薬の使用によりかえって症状が悪化してしまったり、ほかに飲んでいる薬がある場合には飲み合わせが悪くて思わぬ健康への影響が現れたりすることもあります。

少しでも心配なことやわからないことがあったら、遠慮なく薬剤師に相談してください。安心・安全に薬の力を活用して、一緒に花粉症のシーズンを快適に乗り切りましょう。

高垣 育 薬剤師ライター、国際中医専門員

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たかがき いく / Iku Takagaki

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。毎週100人ほどの患者さんと対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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