DHA、地中海食が実は「脳にいいと言い切れない」訳 統計的に有意な効果が見られない研究も多い

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脳にいいといわれているDHAですが、本当なのでしょうか(写真:marumaru/PIXTA)
アルツハイマー型認知症リスクを下げるのに効果的と考えられている要因の1つに食事があります。ただ「従来は脳にいいと考えられていた要素を生活に取り入れても、統計的に有意な効果は見られなかった研究が多い」と話すのが放射線科医の渡邉啓太氏です。新著『健康脳 脳MRIから見えてきた認知症予防』を上梓した渡辺医師が、今回は「地中海食」と「DHA」の効果について解説します。

地中海食と認知機能の因果関係は不明

地中海食は、果物、野菜、豆類が主体で、適量の肉と魚、オリーブ油、少量の乳製品を摂取するバランスのいい食事です。

この地中海食はさまざまな面で健康にいいと考えられており、認知機能低下の予防効果以外にも、心血管疾患やうつ病のリスク軽減などが報告されています。また、脳MRI研究においても、脳全体の萎縮予防や海馬の萎縮予防の効果が期待されています。

地中海食は食事パターンの中で最もよく研究されているものの1つであり、良好な結果が多数報告されています。

ただ、必ずしもすべての研究でいい結果が出ているわけではありません。

中には認知症や認知機能との関連性を認めなかった研究も複数あり、2015年までの研究のまとめでは因果関係までは言及できないと注意喚起しているシステマティックレビュー(質の高い研究を一定の基準および方法で取りまとめた総説で、信頼性の高い結果がわかります)もあります。

これは、認知機能と地中海食との関係は認めたのですが、地中海食を食べているから認知機能が高いのか、認知機能が高いから地中海食のような健康的な食事を選択しているのか、まではわからないということです。

この問題を解決するためにはランダム化比較試験という研究を行う必要があります。

次ページランダム化比較試験とは?
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