DHA、地中海食が実は「脳にいいと言い切れない」訳 統計的に有意な効果が見られない研究も多い
ランダム化比較試験は参加者を集めた後、①地中海食を始めるグループ、②通常の食事を続けるグループにランダムに割り振り、地中海食を始めることによる効果を確認する研究手法になります。
地中海食に関する2022年のシステマティックレビューでは、過去のランダム化比較試験を統合したところ(設定した基準に当てはまる研究は2つだけでしたが……)、地中海食を摂取することで認知機能のうちワーキングメモリ(何らかの課題遂行中に情報を一時的に保存する認知機能で、複数の作業を同時進行させることに関わります)、エピソード記憶は向上したが、注意力は低下したと報告されています。
地中海食を始めることが認知機能にいいのか悪いのか判断に悩ましい結果ですが、研究者目線で見ると、研究内で参加者の食事パターンを変える(地中海食を始める)という研究手法はとても難しいです。
例えば、日本食の効果を調べる研究に参加したとして、「明日から食事はできるだけ日本食を食べてください」と指示されても、指示を長期間守れる人は必ずしも多くありません。食事パターンの研究にはこのような難しさがある点も、明瞭な結果が出ていない1つの原因と考えています。
日本食に関しては、久山町研究にて大豆、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ない食事パターンが認知症の予防につながると報告されています。
結果が割れているMIND食
近年注目されている脳にいい食事として、MIND食という地中海食と高血圧改善用の食事を組み合わせた食事も提案されています。
MIND食に関する研究では、スウェーデンにおける2223人の6年間の追跡研究やアメリカにおける960人を対象とした5年間の追跡研究では加齢に伴う認知機能低下を軽減する効果が報告されているのですが、同じくアメリカで1万6058人の高齢女性を対象とした13年間の追跡研究では認知機能低下を軽減する効果は確認できなかったとする報告があり、結果が割れています。
まとめとして、研究によっては有効性が十分でないとする研究結果も存在していますが、地中海食やMIND食は脳への健康効果が期待されます。
ただ、新しく地中海食やMIND食を始めることによる脳への健康効果は不明な点も残っています。非健康的な食事を続けている人が、健康的な食事に変えた場合はさすがに効果を期待したいですが、ある程度健康的な食事の人が食事習慣を変えた場合に期待できる効果はもしかすると少ないかもしれません。
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