DHA、地中海食が実は「脳にいいと言い切れない」訳 統計的に有意な効果が見られない研究も多い

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また、日本人にとって気になる、日本食と地中海食のどちらが脳にいいかということは解明されていません。日本食と地中海食のいいとこ取りの作戦で、大豆類を多く摂取する、野菜を多く摂取する、時には地中海食を参考に新鮮な果物やナッツ類やオリーブオイルを取り入れるといった方法は考えられます。

一方で、日本人を対象に2年間の経過を追った研究では、「食事の多様性」が海馬の萎縮予防に有効とする結果が報告されています。MIND食など特定の食事ルールを厳密に守ることは、食事の多様性を減らすリスクも含んでいるため、ルールを厳しくし過ぎないことも必要かもしれません。

●地中海食は脳への健康効果が期待できるが、効果は研究の道半ば

DHA/EPAは脳にいいのか?

脳にいいとされるさまざまな栄養素が知られていますが、数多く研究されているのが、ドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)です。これらは魚や植物由来の脂肪に多く含まれる不飽和脂肪酸の1つで、多くの脂肪酸を含有する脳にとって、発達や老化防止に役立つと考えられています。認知症だけでなく、うつ病や心血管病にも有効性が期待されています。

MRIを用いた研究では、魚類の摂取が多い、または血中の不飽和脂肪酸が多いことが、脳の全体や海馬などの容積の大きさと関連することが報告されています。65~80歳女性の血中DHAおよびEPA濃度を計測し、8年後の海馬容積を計測した研究では、血中のDHA/EPA濃度が高いほど、海馬が大きかったことが報告され、DHA/EPAによる加齢に伴う脳萎縮の予防効果が期待されています。

今回紹介した以外にもDHA/EPAと脳容積の大きさの関連を示す研究は多数ありますが、一方で、ランダム化比較試験において軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者402人を、DHAのサプリメントを摂取するグループと、有効成分が入っていないサプリ(研究では「プラセボ」と呼ばれます)を摂取するグループに分けて、18カ月間の経過を追ったところ、DHAのサプリメントによる認知機能低下の予防効果や全脳や海馬の萎縮予防効果は認められませんでした。

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