DHA、地中海食が実は「脳にいいと言い切れない」訳 統計的に有意な効果が見られない研究も多い

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また、別のランダム化比較試験では加齢黄斑変性という目の病気の患者3501人を4つのグループ、①DHA/EPAサプリメント、②ルテインサプリメント(緑黄色野菜に含まれる色素で、目や脳の健康に大事と考えられています)、③DHA/EPAとルテインサプリメントの両方、④有効成分が入っていないサプリメント(プラセボ)に分けて、1年間の認知機能の変化を調査した研究があります。

その研究においても、DHA/EPAサプリメント、ルテインサプリメントの認知機能への良好な効果は認められなかったことが報告されています。これらのランダム化比較試験は研究結果の信頼性の高い手法で、DHAを摂取することで脳にいい効果が得られるかを確認できると考えられています。

認知機能への有効性は十分にわかっていない

一方で、100人から200人規模の高齢者を対象としたランダム化比較試験では、DHAサプリメントが認知機能の維持に有用であったとする報告や脳機能画像の研究において脳を活性化させたという報告もあります。

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が、現状ではDHAの摂取を積極的に始めることによる認知機能への有効性は十分にわかっていません。

これらのランダム化比較試験の結果から考えたいのは、DHAといった脳への有効性が大いに期待され、いくつもの科学的検証が行われている栄養素ですら、サプリメントの摂取のみで、(少なくとも)短期間での劇的な効果は認めないようだということです。

脳の健康増進を目的とした場合、特定のサプリメントや栄養素を摂取するだけでは不十分な可能性が高く、運動や生活習慣などいくつかの要素をあわせて取り組む必要があると考えています。

●脳の必須栄養素のDHAでさえ、サプリメント単独での認知症予防効果は不透明
渡邉 啓太 京都大学特定准教授、医学博士

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わたなべ けいた / Keita Watanabe

1982年愛媛県生まれ。産業医科大学医学部卒業。放射線科医、医学博士。産業医科大学若松病院放射線部部長、産業医科大学助教、放射線科医局長、熊本大学および米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校留学を経て、現在は京都大学特定准教授として脳MRI研究に取り組む。これまでに日本医学放射線学会総会のCyPos賞、日本磁気共鳴医学会大会の大会長賞を受賞し、責任著者を担当した論文は日本医学放射線学会雑誌の2020年度最優秀論文、2021年度優秀論文に選出されている。

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