「"子ども同士"の性被害」親に言えない深刻な事情 「子ども同士のいたずら」と流され、傷つく子も

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また、5歳前後では家庭環境による差が大きく、「男の子は多少乱暴でもOK」といったジェンダーの刷り込みも見られるという。ゆっぺさんも「確かに、加害児童は男の子ばかりの3人兄弟の末っ子だった」と振り返る。年長の兄弟が隠し持っていた成人向けの本や映像を見て、好奇心がかき立てられたのかもしれない。

こう考えると、ゆっぺさんに加害を与えた男児は、家庭で何も教えられないまま加害を続けて、多くの女児に嫌われた挙句、最後に罰を受けた「無知ゆえの被害者」とも考えられる。

軽い接触から行為がエスカレートすることも

2023年4月から、本格的に文部科学省の指示で「生命(いのち)の安全教育」が始まる。文科省では子どもたちが性暴力の加害者や被害者、傍観者にならないよう、教育・啓発活動の充実、学校などで相談を受ける体制の強化、わいせつ行為をした教員等の厳正な処分、社会全体への啓発などについて取り組みを強化すると打ち出した。

このような背景から浅井氏は「幼児期から具体的かつ予防的な性教育が求められる」と指摘する。

「大切にしていきたいのは、『からだの権利教育』です。これまでプライベートゾーンを触らせたり見せたりしたらダメだと教えてきましたが、そこだけではありません。肩や手、頭も触られて嫌だと感じたら言えること、そして逃げることが大事です。そういう教え方をしないと“グルーミング”といって、軽い接触から始まり、行為がエスカレートするリスクもあるのです」

浅井氏によると、2018年にユネスコなどが共同で出した『改訂版 国際セクシュアリティ教育ガイダンス』に「からだの権利」について定義してあり、「誰もが、自分のからだに誰が、どこに、どのようにふれることができるのかを決める権利を持っている」とある。

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この「からだの権利」が侵害されそうになったら、異変を感じた時点で逃げる。プライベートゾーンにまで踏み込ませない。また、自分の体をきちんと知って説明できることが大切である。

被害の報告も「〇〇くん、キモい」だけで終わらせず、「自分の体の、この部分にこんなことをされて、とても嫌だった」ときちんと言えるように。そのための「生命の安全教育」であってほしいと考えている。

ゆっぺさんが作品のタイトルに「なんで言わないの?」と入れたのは、「性被害を受けても、言えなかった気持ち」を描きたかったからだった。子どもが言えなかったとしても性被害は身近にあり、大人がSOSを聞き逃がしているかもしれない。

若林 朋子 フリーランス記者
わかばやし ともこ / Tomoko Wakabayashi

1971年富山市生まれ、同市在住。1993年から北國・富山新聞記者。2000年まではスポーツ全般、2001年以降は教育・研究・医療などを担当。2012年に退社し、フリーランスの記者に。雑誌・書籍・広報誌やニュースサイト「AERA dot.」、朝日新聞「telling,」「sippo」などで北陸の話題・人物インタビューなどを執筆する。最近、興味を持って取り組んでいるテーマは、フィギュアスケート、武道、野球、がん治療、児童福祉、介護など。

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