「"子ども同士"の性被害」親に言えない深刻な事情 「子ども同士のいたずら」と流され、傷つく子も

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被害に堪えかねて一度は先生に告白を試みたが、「男の子ってね、好きな子には意地悪しちゃうものなんだよ。許してあげてね」と、取り合ってもらえなかった。30年以上前の話ではあるが、当時はゆっぺさんの担任だけでなく、そのような対応をした大人は少なくなかったかもしれない。

その言葉にゆっぺさんは絶望した。お昼寝の時間に下着の中へ手を入れられてから、加害男児が単なる「嫌なやつ」では済ませられず、恐怖を感じる存在になっていたからだ。それゆえに通園を拒否する日もあった。

「加害児童が私のことを好きだったのかどうかはわかりません。ですが、仮に大人に置き換えたとしても、『愛しているのになんで逃げるんだよ。仲良くしてくれ』と迫るDV加害者から、『悪気はないから我慢して』と言われて被害者が我慢するのはおかしいですよね。『子どもだから何をしてもよい』わけではなく、子どもの加害を大人は容認してはいけないと思います」

その後、加害男児はさらに仲間を巻き込み、ゆっぺさんがトイレに入ると、男児3人でその姿をのぞくようになった。しかし、周囲に相談することができない。同じように被害に遭った女児もいたが、彼女は泣くことで被害が周囲に伝わり、ターゲットから外れた。それでもゆっぺさんは「自分が我慢すれば丸く収まる」と沈黙し続けた。

ある日、パンツを下ろすなどのほかの子への加害が見つかり、先生が激高。クラス全員の前で加害男児一派のパンツも下ろすという、かなりショッキングな罰を与えた。「目には目を」との方針からの厳しいお仕置きだった。とはいえ、ゆっぺさんの気持ちが晴れたわけではなく、余計に傷ついた思いがずっと心の底にあった。

「この漫画を描くまで、自分が傷ついていたという自覚がまったくなかったのです。しかし、描きながら何度も涙があふれました。漫画によって当時の被害を知った母は『あの時、気づいてあげられなくてごめんね』と言ってくれました」

長女の被害を知ったとき、どうしたか

漫画を描いたきっかけは、長女が5歳のとき、クラスの男児からパンツを下ろされるといった性被害を受けたことだった。担任の先生に報告し、その際「どうか子どもがやることだからと、軽視しないでほしい」と強く訴えた。

「私に同じような経験がなかったら、娘の言葉を聞き流していたでしょう。先生に話したところ、クラス全員に対して『このようなことをしてはいけません』と言ってくれました」

ゆっぺさんのときは、クラス全員を前に加害者・被害者が明らかにされ、加害男児一派が罰を受けた。一方、娘の担任は人物を特定せずに諭し、これを機に被害はなくなった。

ゆっぺさん自身も被害者だったことを長女に伝えると、娘も涙を流したという。

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