さらに、腸のカーブがきついなど、挿入が難しい患者に対応できる技術を習得するには、1万件の検査数が必要だと考えている。大腸内視鏡検査の数をホームページに掲載している医師や医療機関も増えてきているので、参考にするといいだろう。
「挿入の技術については、実際に受けた人のリアルな口コミも参考になると思います」(白倉さん)という。
検査でつらい思いをした人は、その状況を医師に伝えることも大事だ。これまでかかった病気や手術歴などから、内視鏡の挿入技術に配慮が必要とわかれば、より経験豊富な医師が施術を担当する。その医療機関で対応できない場合、適切な施設に紹介してくれることが多いからだ。
「患者さんの状況が詳しくわかれば、こちらもそれに合わせた準備ができる。大腸内視鏡の専門医としては、『二度と受けたくない』という人に、『次は大丈夫ですから、ぜひ、もう一度、チャンスをください』という気持ちです」
人工知能搭載で内視鏡も進化
大腸内視鏡そのものも、進化している。
例えば、レンズのついた先端部分の向きを自在に変えることに加え、手前の管の部分をまっすぐにしたり、たわんだ状態にしたりと、腸のカーブや動きに合わせて細かな調整ができるようになっている。このため、以前の機器よりも、よりスムーズに挿入することができる。
もちろん、がんなどの病変を見逃さないことも大事で、それに関しては最近は大腸内視鏡にAI(人工知能)が搭載され、精度が高まった。
大腸内視鏡検査では内視鏡を盲腸まで到達させた後、徐々に抜きながら、モニターで病変の有無を確認していく。ポリープなどの病変が見つかったらその部分を拡大して観察したり、必要に応じて一部の組織を採取する。
「AIも同じように光の反射の違いや隆起部分に反応するとポンと音を出し、モニター上にチェックした場所を示してくれます」
AIは病変以外のものもとらえるので、現在のところ、あくまでも補助としての使用にとどまる。しかし、「がんの見落としや内視鏡技術の底上げに、確実につながっている」と白倉さんは確信している。
なお、飲む内視鏡といわれる「カプセル内視鏡」もある。これはがんや炎症など、小腸や大腸の異常を直接とらえる検査だ。LEDフラッシュランプ、CCDカメラ、無線装置が内蔵されたカプセルが小腸、大腸を通過しながら画像を2枚/1秒の間隔で撮影し、無線で転送されたデータから、画像を収集する。
「大腸内視鏡検査や胃の内視鏡検査で、出血の原因を特定できない場合で、医師が必要と判断した場合に実施されます。対象となる場合、保険適用となります」(白倉さん)
大腸内視鏡は思った以上に進歩している。怖がらずに40代になったら一度、受けてほしい。
(取材・文/狩生聖子)
白倉立也医師
1994年、東邦大学医学部卒。同大医学部附属大森病院第二外科、同大医療センター大森病院救急救命センター、埼玉県央病院内科などを経て2008年より松島クリニック内科、2012年より現職。大腸内視鏡および胃の内視鏡(上部消化管内視鏡)の診断・治療が専門。大腸内視鏡の検査数は2023年1月現在で約5万件。過敏性腸症候群や便秘症の治療も得意としている。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本外科学会専門医など。
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