2010年代アメリカに見た「希望のSNS」が生んだ影 「1%が99%の富を保有する」不満から連帯へ

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ザッカーバーグがモデルの『ソーシャル・ネットワーク』はSNSの影を予見していた(写真:Graphs/PIXTA)
2010年代とは、いったいどんな時代だったのか?
アメリカはどう変化し、私たちに何が残されたのか?
2010年代、完全にアメリカ社会のインフラとなった「つながる」技術SNSは人々に大きな希望を生み、「1%が99%の富を占有する」不満から連帯のムーブメントが生まれ。アラブ世界にも民主化のうねりが広がっていった。
そして、その希望は、同時に影も生んでいく。
超大国アメリカの変化を、映画のスクリーン、時代を彩った流行、事件などから読み解き、大衆の欲望の形、時代の空気を呼吸した人々の息づかいを感じ取ることを試みるNHKの番組『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』。番組からの書籍2冊目となる『アメリカ 流転の1950-2010s』から一部抜粋、再構成してお届けする。

SNSが見せた変革の可能性

2009年、アメリカは新たな一歩を踏み出した。建国以来初となる、アフリカ系アメリカ人、バラク・オバマが大統領に就任したのだ。ケニア人の父と、白人の母を持ち、インドネシアやハワイで育ったオバマは、まさにこの国の多様性の象徴だった。

誰もが平等に、自由に生きることができる国、だったはずのアメリカ。オバマは就任式で「Change country! YES WE CAN!(国を変えよう。私たちにはできる!)」と呼びかけた。2010年代の幕開け、再びアメリカの未来は希望に輝いて見えた。

自由と民主主義をさらに広く、社会に行き渡らせることが可能かもしれない。テクノロジーの進化はそんな期待も膨らませた。90年代末にインターネットを通して人々が通じ合うSNSは、スマートフォンの誕生によって急速に浸透し、その領域を拡大していった。

2010年、フェイスブックはアクセス数でグーグルを抜き、多くの人がツイッターでつぶやくようになった。その年、画像投稿に特化したインスタグラムも登場した。

ジャン= リュック・ゴダールから「アメリカで最も優れた映画批評家の一人」と評された「シカゴリーダー」映画評論元主筆のジョナサン・ローゼンバウムは、2010年代初頭に感じたSNSの可能性をこう語る。

「これが理論的には、全世界を1つにするだろうと思いました。

世界的な運動がありえると思えたのです。あらゆる種類のことがインターネットを通じて行われる国際的な運動になりえると」

この、いかにもアメリカ的にも聞こえる楽観的な理想論に導かれるかのように、時代は動きだす。SNSが世界各地の自由を求める動きを現実に後押しするシーンが生まれたのだ。

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