2010年代アメリカに見た「希望のSNS」が生んだ影 「1%が99%の富を保有する」不満から連帯へ
SNSが見せた変革の可能性
2009年、アメリカは新たな一歩を踏み出した。建国以来初となる、アフリカ系アメリカ人、バラク・オバマが大統領に就任したのだ。ケニア人の父と、白人の母を持ち、インドネシアやハワイで育ったオバマは、まさにこの国の多様性の象徴だった。
誰もが平等に、自由に生きることができる国、だったはずのアメリカ。オバマは就任式で「Change country! YES WE CAN!(国を変えよう。私たちにはできる!)」と呼びかけた。2010年代の幕開け、再びアメリカの未来は希望に輝いて見えた。
自由と民主主義をさらに広く、社会に行き渡らせることが可能かもしれない。テクノロジーの進化はそんな期待も膨らませた。90年代末にインターネットを通して人々が通じ合うSNSは、スマートフォンの誕生によって急速に浸透し、その領域を拡大していった。
2010年、フェイスブックはアクセス数でグーグルを抜き、多くの人がツイッターでつぶやくようになった。その年、画像投稿に特化したインスタグラムも登場した。
ジャン= リュック・ゴダールから「アメリカで最も優れた映画批評家の一人」と評された「シカゴリーダー」映画評論元主筆のジョナサン・ローゼンバウムは、2010年代初頭に感じたSNSの可能性をこう語る。
「これが理論的には、全世界を1つにするだろうと思いました。
世界的な運動がありえると思えたのです。あらゆる種類のことがインターネットを通じて行われる国際的な運動になりえると」
この、いかにもアメリカ的にも聞こえる楽観的な理想論に導かれるかのように、時代は動きだす。SNSが世界各地の自由を求める動きを現実に後押しするシーンが生まれたのだ。