2010年代アメリカに見た「希望のSNS」が生んだ影 「1%が99%の富を保有する」不満から連帯へ
デジタルテクノロジーの時代の物語に描かれたのは、太古の昔から変わることのない人々の欲望の形だ。
先にSNSの可能性を語った映画批評家ローゼンバウムは、『ソーシャル・ネットワーク』について、こう続けた。
「インターネットは映画の世界に大きな影響を与えました。登場人物は簡単にメールやSNSでやりとりするようになり、ストーリーの作り方も変化しました。
私自身、シカゴに住んでいるというよりもインターネットに住んでいるといったほうが正しいくらい、その世界にどっぷりと浸かり恩恵を受けています。ただ、インターネットには多様な面があり、グローバリズムと同様に単に良いか悪いかを判断できるものではありません。
脚本家アーロン・ソーキンによるこの映画のストーリーは、全てが事実に基づいているわけではありません。
世界中で悪が増幅
映画では、ザッカーバーグが、ガールフレンドとの関係も維持できない人として描写されています。しかし実際は、フェイスブックを作った時のガールフレンドと今でも一緒に暮らしています。ただし、事実かどうかということがこの映画のポイントではありません。
重要なのは、ソーシャルメディアによって世界中で悪が増幅されていることです。政治的に言えば左派よりも右派のほうがその恩恵を受けています。左派は多くの面で極めて古風で考え方はむしろ「保守的」だからです。
ソーシャルメディアは理論的には世界を1つにするものです。ですがそうはなっていません。それは、良いことも悪いことも強調し、増幅してしまう資本主義の仕組みの問題だと思います。結局、インターネットは以前からあった問題をある意味で大きくしているだけなのかもしれません」
洒脱で風刺の効いた語り口で知られる、「ニューヨーク・マガジン」元編集長で作家のカート・アンダーセンは語る。