2010年代アメリカに見た「希望のSNS」が生んだ影 「1%が99%の富を保有する」不満から連帯へ
「この映画が公開された当時は、まだソーシャルメディアに対して世の中は好意的でした。ザッカーバーグもフェイスブックも軽蔑されてはいませんでした。
フェイスブックによってかつての友達とつながることができる。お互いの子どもの状況を見たり、話したりすることができる、と人々は素朴に喜んでいました。つまり、あれがフェイスブックストーリーの第1章だったんですね。
しかし、それから5年、6年、7年と経ち、私たちはより暗い第2章を見ることになるのです。
しかし、2016年の大統領選でのフェイスブックの危険な役割が明らかになり、確実に状況は一変しました。フェイスブックが噓やプロパガンダ、デマを拡散しうるとわかったのです。
そして私も含めて人々が、今ではデジタル技術の仕組みを以前よりもきちんとわかるようになりました。ソーシャルメディアのビジネスモデルの基本は、できるだけ私たちに画面を見つめさせ、そこに広告を貼り付けることなのです。彼らはあらゆる技術を駆使してそのビジネスモデルに徹し、それによってどんな代償を払うことになってもいいと決めたようです。
ソーシャルメディアは、今日では重要な情報ポータルであり、それは水道や電気などのインフラに匹敵するものです。そこで流された情報が人々の頭に入り込むということを考えれば、より大きな影響があると言えるかもしれません。
かつてザッカーバーグが大統領に立候補するかもしれないという話があったことを思い出しました。彼は全米各地を回り、自分が大統領になることを人々が望んでいるか確かめていました。ほんの5年ほど前のことですが、今ではそれがいかに馬鹿げたことか分かるでしょう。
とはいえ、彼は強大な権力を持っています。19世紀にジョン・D・ロックフェラーとスタンダード・オイル社の横暴に誰もが怒りを覚えましたが、それに太刀打ちすることは誰もできませんでした。私は今、そのことを思い起こしています」
1%が99%の富を占有することへの不満
あるメディアが力を持つことで増幅される、裏切り、嫉妬、階層間の軋轢。『ソーシャル・ネットワーク』は、SNS誕生の影に、そんな人間の性(さが)を見ていた。映画は、裁判を経て人とのつながりを失った主人公が、それと引き換えに若くして巨万の富を得たことを伝え、幕を閉じる。
翌2011年、そうしたSNSによる社会運動が、アメリカ国内でも巻き起きる。
「ウォールストリートを占拠せよ!(Occupy Wall Street!)」
SNSの呼びかけに応え、若者たちが、世界の金融センターを目指して集まった。