2010年代アメリカに見た「希望のSNS」が生んだ影 「1%が99%の富を保有する」不満から連帯へ
2010年から11年にかけてアラブ世界で起きた民主化運動、アラブの春。チュニジアで起きたジャスミン革命を皮切りに、エジプト、リビアなどで、SNSを介した抗議行動が広がっていった。人々は抗議やデモの様子をスマホで撮影し、SNSにアップし拡散した。それを見た市民たちは共感し、次々と運動へ加わった。
アメリカ企業の生み出したテクノロジーが人々の夢を叶える。
政治的にも、技術的にも、世界の進むべき道が、指し示されたかに思われた。
人と人を結んだ結果としての皮肉
2010年に公開された『ソーシャル・ネットワーク』(2010)は、フェイスクブックの創設者マーク・ザッカーバーグをモデルとする作品だ。ハーバード大学2年生のザッカーバーグが、後に世界を席巻することとなるSNSを生み出すまでの物語。だが、映画の内容は単なるサクセスストーリーではない。
そもそも、フェイスブックは「人々」のために作られたわけではなかった。ザッカーバーグは、彼女に振られた腹いせに、大学のサイトをハッキングして「女の子の比較サイト」を作成。大学のサーバーを落とすほどのアクセスを集める。
その噂を聞いた同じ大学のウィンクルボス兄弟たちは、自分たちのSNSのプログラミングをザッカーバーグに依頼する。このサイトにヒントを得た彼は、親友のエドゥアルド・サベリンと共に「ザ・フェイスブック」を立ち上げる。自分たちのアイデアが盗まれたと憤ったウィンクルボス兄弟はザッカーバーグを訴える。
一方、「ナップスター」で知られる有名起業家ショーン・パーカーと知り合ったザッカーバーグは、彼のアドバイスのもと巨額の投資を獲得する。だが、サベリンを経営から外したことで彼との亀裂は決定となり、ザッカーバーグは彼からも訴えられることになる。
人と人とを結ぶはずのSNSを世に出すことで、友人と裁判で争うことになる主人公の姿を描く、皮肉な物語だ。
ちなみに作品を見たザッカーバーグは、「衣装だけは実際に僕が着ていたものと同じだった」と感想を述べている。脚本家アーロン・ソーキンは、取材した事実をベースに架空のキャラクターやエピソードを織り交ぜ物語を生み出した。彼は次のように言う。
「私が惹かれたのはそれこそ何千年も語り継がれてきた友情、裏切り、権力、階級、嫉妬……そういった古典的なストーリーに必要な要素が、この『ソーシャル・ネットワーク』にはすべて入っていたということ。こういったストーリーがこの21世紀の現代的な舞台で繰り広げられていたことに興味を持ったんだ」(映画.com 2011年1月11日)