「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情 せっかくの努力が裏目に出ている可能性が

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それでは、どうすれば同様の事件が防げるのだろうか。もちろん刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ。

2019年2月5日、くら寿司のアルバイトが、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子が撮影された動画がSNSで拡散され、一気に炎上した。その3日後、くら寿司は法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表。

そこに「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とするため」という理由が記載されていて、当時、大きな話題を呼んだ。ただそれ以来、大きな問題となるバイトテロが起きていないので、今回の回転寿司テロでも一定の抑止力になるだろう。

防犯カメラの設置は現実的ではない

合わせて、現場レベルでの改善も必要だ。防犯カメラの設置という案があるが、客と店との信頼関係の構築が難しくなるため現実的ではない。また、店内でスタッフが行き交う環境をつくるために人数を増やす案もあるが、そうなると今以上に値上げをしないとビジネスが成り立たなくなる。それを客が許容してくれるかというと難しいだろう。

となると、テクノロジーで解決するしかない。突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。

それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろう。

もともと回転寿司は、高級だった寿司を庶民でも楽しめるようにと考案された業態だ。その後、各社の熱意と独創性があって、誰もが手軽に寿司を食べられることが当たり前となった。今回も業界の創意工夫が問題を解決し、誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現することを、いち回転寿司ファンとして期待している。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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