「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情 せっかくの努力が裏目に出ている可能性が
各国で給与水準が違うので、単純な物価比較はできないが、日本で値段を上げられない背景には、多くの日本人の可処分所得が減っている事情がある。実際、スシローやくら寿司が値上げをしたときも、「回転寿司にいきづらくなる」という声が聞こえていた。今後、さらなる値上げとなると、どれだけ受け入れられるかは不透明だ。
一方、原材料費だけでなく人件費の高騰も続いている。東京都と神奈川県、大阪府では、アルバイトの最低時給が1000円を超えた。一方で、外食業界は慢性的な人手不足に悩まされている。必要な人材を確保するには、平均以上に時給を上げざるを得ない。その結果、あまり人数をかけると低価格が維持できなくなってしまう事態が起きている。
また、そもそも回転寿司は原価率も高い。一般的な飲食店では原価率が20〜30%だ。その中で100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業もある。つまり、お客にそれだけ還元しているということだ。
こうした中、低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる。自動案内やタッチパネルでの注文、セルフレジが導入され、入店から退店までスタッフとコミュニケーションをしなくてもいい店舗もあるほどだ。テクノロジーは仕入れや物流、調理にも利用されている。
周りの目が届きにくい環境になっている
最後に、ファミレス化だ。近年、回転寿司は業態として進化を続け、デザートやサイドメニューなどが豊富になり、ファミレスと遜色のないメニューラインアップとなっている。コロナ禍では、「ガスト」や「ロイヤルホスト」が大量閉店してファミレスの苦戦が目立った一方、回転寿司は家族連れを中心に好調だった。
コロナ禍で息苦しさのある日常の中、寿司という贅沢感のある食べ物を、家族や気の置けない仲間とゆっくりと楽しめる点が人気を集めた要因だろう。コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界だ。
以上を踏まえて、なぜ回転寿司テロが100円回転寿司チェーンで多発しているのかを探っていきたい。
100円回転寿司チェーンの客単価は1000円〜2000円なうえ、メニューが豊富なので幅広い層が来店しやすい。加えて、店内にはファミリーでゆっくりと過ごせるボックス席が並ぶとともに、テクノロジーの活用で省人化が進んでいる。つまり、店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっているのではないか。
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