電気やガスが届かない、ウクライナ「極寒の日常」 前線近くの街に住む日本人が見た人々の暮らし

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様々なメーカーの発電機を運び出すメンバーたち。大人2人でぎりぎり持ちあがる重さだ。これまで、マリウポリ聖職者大隊に届いた発電機は東部ドネツク州の激戦地、バフムート周辺など前線の街に配られてきた。

一方、日本政府も25台の大型発電機を調達しており、ウクライナ北部の施設などで活用されている。チェルニヒウ州ニージン市のコドラ市長は、「国際的なパートナーから受けた最大の技術支援だ」と感謝の意を表明した。

1月20日以降には追加で237台が届くことになっていて、それらはウクライナの企業に供与されるという。

発電機を動かすために必要なガソリンや軽油は高騰している。所持金が底をつきかけた家庭が多い前線近くの街で歓迎されているのが、小型のまきストーブだ。

このボランティア団体はまきストーブ1つ50ドルとして募金を集め、昨年秋からザポリージャの3つの工場に発注してきた。

支援物資として特注されたまきストーブを作る溶接工。 3つの工場で2千個ほどが製作された。1月26日 ザポリージャ市(写真:筆者撮影)

1200個のストーブを製作した工場のリーダー、イーガル・アレキサンドルさん(58歳)は、「経費と製作時間を節約するためシンプルなデザインを採用した。溶接工も意気に感じて働いている」と話す。

この日、メンバー4人が訪れたのはロシア軍の占領地と接する街、オリエホブ。ウクライナ軍の前線基地がある街で、ロシア側から飛んでくるロケットの着弾音とウクライナ軍が発射する大砲の音が時折交錯する。

1月13日に飛来したミサイルの破片を前に、自宅の窓や扉が破壊されたときのことを話すスベットラナ・マクアシーダさん(55歳 左)。1月26日 ザポリージャ州オリエホブ(写真:筆者撮影)

砲撃を受け屋根が骨組みだけになった家が車窓ごしに見えた。地元の記者によると犠牲になった住民は10カ月で100人を超えているという。住民は次々と避難し、いま残っているのは約2割、2500人ほどだ。

メンバーは、街の郊外にある民家10軒ほどにストーブの燃料として使うまきや食材をつめた袋を配ってまわった。農業で生計を立ててきた住民が多く、秋に収穫した穀物や庭で育てているにわとりの卵や肉などで食いつないできた。多くの家に地下倉庫があり、開戦後は空襲から身を守る避難所として使っている。

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