電気やガスが届かない、ウクライナ「極寒の日常」 前線近くの街に住む日本人が見た人々の暮らし

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ソーラーパネルで作った電気で営業する路上カフェ。 もともと運営していた路面店は昨年10月、ロシア軍の砲撃で破壊された。 1月8日 ザポリージャ市(写真:筆者撮影)

1月8日、旧暦のクリスマス翌日、気温は氷点下9度。店員のディマ(23歳)に話を聞くと、昨年10月、ロシア軍によるザポリージャへの攻撃で路面店が破壊されたのだという。

そうしていま、ソーラーパネルで充電した電気を使い、おしゃれなワゴン車でカフェを営業している。店内の気温は27度。彼は半袖だ。「私、戦争で失業中なの」と苦笑する女性客のアントンに商品を渡したあと、写真を撮らせてもらった。

(写真:筆者撮影)

その後、凍りついた水たまりで転びそうになりながら、街灯が消えた街で撮影を続けた。そして、戻った部屋で、極寒の地の洗礼を受けることになった。お湯で手を洗ったところ、耐え難い痛みに襲われたのだ。指が凍傷寸前になっていたようで、しばらく後遺症に悩まされた。

WHO(世界保健機関)の欧州地域事務局長が、「数百万人が命を脅かされることになる」と警告を発したウクライナの冬。厳しい状況にあるのが、ロシア軍の占領地と接する地域に残る人々だ。

昨年2月の開戦後、毎日のように砲撃を受けてきた街のインフラ施設は壊滅状態で、「水も電気もガスも止まったままだ」と訴える住民の声を耳にしてきた。

そんな場所に通い、支援物資を届けているボランティア団体がある。ドネツク州のマリウポリから避難してきた牧師らが立ち上げたマリウポリ聖職者大隊だ。

人道支援団体の倉庫に届いた発電機。リトアニアの教会関係者らが寄付をした。 1月26日 ザポリージャ市(写真:筆者撮影)

1月26日、リトアニアのクリスチャンたちが手配したトラックがザポリージャ市にある団体の倉庫に到着した。積まれていたのは20台ほどの発電機だった。

「重いから気をつけて!」

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