電気やガスが届かない、ウクライナ「極寒の日常」 前線近くの街に住む日本人が見た人々の暮らし

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
拡大
縮小
自宅の地下倉庫にベッドを作り、避難所にしているリナさん。支援団体が設置したまきストーブで暖をとる。照明がないためヘッドランプが欠かせない。 1月26日 ザポリージャ州オリエホブ(写真:筆者撮影)

この日の最低気温は氷点下4度。木製の簡易扉から吹き込む風を気にしながらリナ・デュートーニクさん(53歳)は団体が設置していたストーブで暖をとっていた。6畳ほどのスペースに2台のベッドと棚がある。食材用の棚には食用油や缶詰などが少しだけ残っていた。

リナさんはヘッドランプをつけたまま、こう話す。

「私は今も街の市場でサラダを作って働いています。何より大切なのは、どうやって生き残るか考えることでしょう。(第2次世界大戦中の)レニングラード封鎖のときにも生き残った人がいたのですから」

外で撮影をしていたときに軍用機が飛来する音が聞こえ、ボランティアのメンバーとともに一時、軒下へ避難した。メンバーのアルシニー(41歳)はこう話す。

「ロシア軍が膠着状態だったオリエホブに近い村に攻め入った、との情報も流れた。一方、占領された地域の真ん中で戦っているパルチザン(民兵)の友人もいる。侵攻から1年が近づく今、彼らの戦いに期待しているところだ」

今週、久しぶりに雪が積もったザポリージャ。戦況をリアルタイムで伝えるアプリ「LiveUAMap」によると、1月31日オリエホブで2箇所、砲撃が確認されている。雪とミサイルの音に身を縮めながら過ごしているリナたちは、次の支援物資が届く日を指折り数えて待っている。

尾崎孝史氏によるウクライナのレポート。過去一覧はこちら
尾崎 孝史 映像制作者、写真家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おざき たかし / Takashi Ozaki

NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わる。映画『未和 NHK記者の死が問いかけるもの』(Canal+)を監督。

著書に『汐凪を捜して 原発の町 大熊の3・11』(かもがわ出版)。『未和 NHK記者はなぜ過労死したのか』(岩波書店)。写真集『SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語』(Canal+)で日隅一雄賞奨励賞、JRP年度賞。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT