トヨタ「AE86」電動化&水素エンジン化の真意 メーカーが提案する旧車コンバートの実現性

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

水素エンジンのAE86 H2コンセプト(水素エンジン車)

AE86 H2コンセプト(水素エンジン車)
もともと搭載されている4A-Gエンジンをベースに、燃料をガソリンから水素に変更したAE86 H2コンセプト(水素エンジン車)(筆者撮影)
水素エンジン
もともと搭載されている4A-Gユニットを利用しながら、最低限のカスタム内容で水素エンジン化が図られている(筆者撮影)

一方、水素エンジン化されたAE86 H2コンセプト。こちらは、トヨタがレーシングチームの「ルーキーレーシング」と共同で参戦する「スーパー耐久」シリーズ用マシン、水素エンジン搭載の「GRカローラ(水素カローラ)」などの技術が投入されているという。従来からの内燃機関を活かしつつ、燃料を水素とすることで、カーボンニュートラルに対応したエンジンの実用化を目指すプロジェクトの知見が活かされているのだ。

水素タンク
荷室には、ミライと同様に水素タンクが2基設置される(筆者撮影)

主な特徴は、水素燃料を使うために専用のインジェクターやフューエルデリバリーパイプ、プラグなどに変更されているが、可能な限り、もともと搭載している4A-G型エンジンをそのまま活かしている点だ。燃料となる水素は、FCVモデル「ミライ」用の高圧水素タンク2本を後方荷室に装備。改造規模を最小限にとどめることで、ノーマルのよさを最大限に残している。おそらく、BEV車よりも、ガソリン車らしい乗り味が楽しめるのは、このH2車のほうだろう。

トヨタが旧車をベースにコンセプトカーを開発した背景

豊田章男社長(現、会長)
東京オートサロン2023のプレスカンファレンスで、2台のAE86について説明する豊田章男社長(次期、会長)(筆者撮影)

「新車だけでなく、古いクルマのカーボンニュートラル化も同時に進めていく」。トヨタが、これら2モデルを開発する目的のひとつだ。初日に開催されたプレスカンファレンスにおいて、豊田章男社長(次期、会長)が明らかにした。

ご存じのとおり、トヨタに限らず世界中の自動車メーカーでは、現在、BEVなど排気ガスを出さないエコな新型車の開発や市販を進めている。だが、一方で、それらが市場に出まわり、道路を走るクルマのすべてがC02排出ゼロとなるには時間がかかる。

豊田社長によれば、「多くの自動車メーカーが2030年から2040年頃をターゲットにバッテリーEVへのシフトを目指しているものの、現実には、これから売り出す新車をEVにするだけでは2050年のゼロカーボンは達成できない」という。当日、豊田社長の登壇では、2020年のデータを例に、それについて説明した。それによれば、世界の自動車保有台数は、2020年時点で15億台以上。それに対し、新車販売台数は約8000万台で、保有台数全体の20分の1程度しかない。今後、新車で販売される車両がすべてBEVになったとしても、全体の構成比率でいえば、圧倒的に既存のガソリン車のほうが多いままなのだという。そこで、古いクルマのパワートレインをガソリンエンジンからコンバートし、BEV化もしくは水素エンジン化することで、カーボンニュートラル実現のスピードを上げるのだという。

次ページ本当に古いガソリン車が乗れなくなる可能性はあるのか?
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事