友人からの悩み相談を「聞き疲れしない」コツ 「自分自身を重ね合わせて同感」してはダメ

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相手も自分の言いたいことや気持ちを受け止めてもらえる感覚を得られるので、安心して気持ちを吐露することができ、その結果、気持ちの整理ができて解決に向かいやすくもなります。

では、いかなるときもアドバイスはいらないのでしょうか。親身になることは相手を思っているからこそで、どうにかしてあげたいと意見したくなることもあるでしょう。しかし、残念ながら、そのエネルギーは無駄に終わることが多いのです。なぜなら、答えはもうすでに相談している人の中にあるからです。

相手が答えを求めていることは実は少ない

相談や質問の形態をとっていても、相手が答えを求めていることは実は少ないのです。「自分の置かれた状況を理解してほしい」といった「話を聞いてほしい」という思いであることが多く、実際に、ハラスメント等で訴えがあるケースでさえも、このパターンは半分くらいあります。

また、「答えは決まっているのだけれど、話すことによって整理したい」もしくは、自覚がないだけで心の内には答えがあり、「それにたどり着くまで寄り添ってほしい」という場面も多くあります。ただ、聞いて受け止めてほしいだけなのですから、そこで、よかれと思って「ああしたらいい、こうすればいい」といったところで、なんの解決にもなりません。

しかし、場合によっては、答えが必要な場面もあります。それは、具体的な方法や対策など求められたときです。「この書類の書き方がわからなくて困っている」「〇〇に行きたいのに迷ってしまった」といった内容の場合です。答えられるならば、速やかに伝えましょう。

人との関係性を安定的に健やかに保つには、「境界」を侵害しないことが、大切です。それは、相手と距離をとるということではなく、一人の人間として信頼し尊重することなのです。

一人ひとり大切な存在として関わるために、心にとめていただければ幸いです。

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大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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