皇后が近代天皇制の中で果たした役割とは? 原武史×奥泉光「皇后たちの祈りと神々」

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:歴代天皇の中には、たとえば称徳天皇のように出家して天皇になった例もあります。アジア太平洋戦争の末期にも、昭和天皇を出家させて裕仁法皇とし、京都の仁和寺に幽閉させる計画がありました。つまり、天皇だから神道を信仰しなければならないという考え方自体が実は間違っているのかもしれない。天皇家の歴史自体が、時代に即応して巧みに変わっていったという側面を持っています。歴代天皇の事績については、宮中三殿で式年祭と呼ばれる祭祀が行われるたびに、歴代天皇に関する講義を受けているので、よく知っていたはずです。

奥泉:なるほど。祭祀はただの儀礼として、その精神的な内実は信仰で充塡するという発想ですね。

:その流れがひょっとしたら現皇后につながっている可能性もあります。皇后美智子はカトリックの家で育ちました。1959年に結婚するときに、香淳皇后や梨本伊都子らはそろって反対した。だけど、昭和天皇は「美智子に期待している」と言って支持しています。彼女がカトリックの家で育ったことをむしろ好ましいと考えていたのかもしれない。

そうすると、カトリックの信仰を持ちつつ、宮中祭祀もきちんと行うということが、実際に今させられている可能性が高いんです。

80歳を超えてもなお続けられる宮中祭祀

原武史・著『皇后考
(講談社)税別価格:3000円

奥泉:宮中祭祀というのは、現在も変わらず続けられているんですか?

:ええ。しかも明治・大正・昭和・平成と4代を比べると、現天皇・皇后ほど熱心な人はいません。2人とももう80歳を超えています。宮中祭祀というのは肉体的にもハードなので、もうやめてもおかしくない。でも、いまの天皇・皇后は自分たちが祈らないと、という気持ちがすごく強いように思います。

奥泉:最近、大災害が起こるたびに、2人が祈る姿をよく目にします。皇后は一歩引いて天皇の後をついていく印象ですが、本当は彼女の宗教的な個性が大きな意味を持っているのかもしれませんね。

:そういう意味では、祈りと行幸啓を二本柱にした皇室の存在感は、昭和のとき以上に増している感じがします。『皇后考』の最後に「現皇后こそは最高のカリスマ的権威をもった〈政治家〉である」と書きましたが、しかし同時に、それでは次代はどうなるのかと考えると、とても心もとない。その帰結は近い将来にわかるでしょう。

講談社『本』2015年4月号掲載

講談社『本』編集部

読書人のための月刊情報誌「本」は、講談社が発行する新刊書籍のガイド。著者による特別エッセイのほか、幅広い話題を提供している。

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