共感より効果的、相手の本音引き出す最初の一言 論破ではない、賢い人が使う「バランス理論」

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最後に、「バランス理論」を使ったり、相手に使われたりしたときの注意点をお伝えしておきます。

「バランス理論」を使って相手の本音を引き出したとき、注意したいのはお互いの関係性です。「A−B−Xシステム」は、相手とある程度の友好関係や信頼関係が築けているときにしか作用しません。つまり、相手との関係性が薄かったり、敵対関係にあったりする場合には、話し合いによって相手の本音を引き出すのは難しくなる可能性があります。

そこで、本音を引き出したい相手には少なくともこちら側から接触回数を増やしたり、好意を寄せる姿勢を見せたりしておくことで、信頼関係を深めておく必要があります。

一方、相手があなたと異なる意見を出してきて不快感を感じてしまったとき、つまり、相手が「バランス理論」を使ってあなたの本音を探ってこようとしたときに気をつけるべきは、次の2つです。

① 本音を漏らしすぎない

② 対応バイアスにはまらない

まず、①の「本音を漏らしすぎない」について。相手が意図的にあなたの本音を探り出そうと反対意見をぶつけてきて、ついムキになって自分の本音をベラベラと喋ってしまうことを避けましょう。本音を出しすぎることで、不利になることがあるからです。

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次に②の「対応バイアスにはまらない」について。対応バイアスとは、相手の言動の原因を、その人個人の内面に紐づけてしまう傾向のことです。

つまり、自分と異なった意見を言った相手を「この人とはそりが合わない」と思い込んでしまうこと。このバイアスによって、相手のことを嫌いになったり、敵対視したりしてしまうのです。

しかし、冷静に考えてみると、その場その場での意見と、その人の性格や内面は分けて捉えるべきもの。ある対象に対する意見が食い違っていても、友好関係を築くことは可能です。
相手が自分と異なる意見を言ってきたとしても、その意見の中身と相手の内面とは切り離して受け止めること。それが「バランス理論」を使われたときに重要な対処法となります。

ある対象に対して、あえて相手との間に不一致を演出。それを解消したい、バランスを取りたいという心理を使い、相手の本音や本心を引き出す……。仕事ができる人や頭のいい人は、交渉術の1つのバリエーションとしてこのようなテクニックを身につけています。

あなたも相手の本音をうまく引き出し、より円滑なコミュニケーションを行っていくためにも、「バランス理論」をぜひ試してみてください。

犬塚 壮志 教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役

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いぬつか まさし / Masashi Inutsuka

福岡県久留米市生まれ。大学在学中から受験指導に従事。業界最難関といわれる駿台予備学校の採用試験に当時最年少の25才で合格し、開発したオリジナル講座は開講初年度で申込当日に即日満員御礼、キャンセル待ちの大盛況。3,000人以上を動員する超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一(映像講義除く)。年間1,500時間以上の講義を行う中で、多種多様な説明パターンを身につけ、「大人の学び方改革」を目的に駿台予備学校を退職。講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営。ありとあらゆるシチュエーションに必要な説明スキルを磨き上げる。

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