トヨタ「イプサム」3列シートを大衆化した立役者 手頃なサイズ感と7人乗りが新鮮な存在だった

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欧米では、日本より先にそうしたクルマを暮らしの道具のひとつと考える傾向があり、ステーションワゴンやバンが有効活用されてきた歴史がある。さらに、ことに欧州では一般道を含め走行速度域が高いため、それなりの走行性能の高さが求められる。そうした交通環境のなかで、フランスでイプサムが走っているのを見かける機会があった。現地では「ピクニック」という車名であった。いかにも楽し気な車名に、家族や仲間と出かけるうれしさが込められていた。

ご承知のとおり、フランスは夏に1カ月近い休暇(バカンス)をとるのが恒例で、高速道路を南仏へ向け長蛇の列で移動することで知られている。家族総出で荷物を満載し、1カ月の休暇を楽しむのに必要なのは、まさにイプサムのようなクルマなのである。それでいて、車高が高すぎない外観は、休暇以外の多くの日々を町で暮らす移動手段として手ごろだ。

イプサムにはクロスオーバー車としての満足感があった

日本のミニバンでいえば、初代オデッセイは操縦安定性に優れ、運転を楽しむこともできた。より背が高く、外観も室内の有効活用を優先した四角い造形のステップワゴンは、オデッセイに比べ日常的な運転での操縦性に劣ったといえる。一方、あたかも商用バンのように荷室を利用できながら、乗用車という扱いのステップワゴンの人気が高かったのはいうまでもない。

いわゆるミニバンという価値からすると、使い勝手に不足を覚えさせる側面があったかもしれないが、初代イプサムのよさは、まさにクロスオーバー車として全方位で満足をもたらす存在であることだった。そして、2001年に2代目へモデルチェンジする。

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