2つ目は「アメリカはつねにフェアであり、アメリカと異なるやり方をする国はアンフェアだ」という思いこみがアメリカにあることだった。
こうした教訓は、現下の米中対立にも通底している。中国はアメリカに共産党員を留学させ、虎の子の新興技術を盗み、政府補助金で国営企業に下駄をはかせている。そんなアンフェアーな中国は許さないという雰囲気がアメリカ議会からは伝わってくる。
しかも中国はアメリカにとって、日本のような同盟国ではなく「唯一の競争相手」(アメリカの国家安保戦略)である。対中輸出規制は今後もエスカレートし、半導体に留まらず、医薬品や原薬、バイオ分野の新興技術やデータにも広がると見られている。
サプライチェーン・マッピングと特定重要物資のアップデート
米中の地経学的競争は激化し続けている。戦略物資のサプライチェーンは、その主戦場である。バイデン政権は発足当初からサプライチェーンの強靭化を目指し、アメリカ流のフェアな競争環境を整備すべく邁進している。日本はアメリカと連携しつつも「わが国が守り、発展させるべき国益」(国家安保戦略)に照らし、岸田政権が進めてきた経済安全保障の政策体系を、より一層、強化する必要がある。
日本政府は2022年、サプライチェーンの脆弱性やチョークポイントをあぶりだすため、サプライチェーン・マッピング(調査)を行い、国として安定供給を確保すべき11の特定重要物資を指定した。これには半導体、蓄電池、重要鉱物などが含まれる。
医薬品については「抗菌性物質製剤」が指定された。その中で代表的なβラクタム系抗菌薬は、あらゆる手術の感染予防で使われる一方、原材料や原薬を、ほぼ 100%中国に依存してきた。2019年には中国で原材料の製造トラブルがあり、βラクタム系抗菌薬であるセファゾリンナトリウムの供給が滞った。手術を延期せざるをえない事案も発生した。
ただしセファゾリン不足から3年が経ち、医療現場においては在庫を備蓄するなど対策も進められてきている。
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