岸田首相の大勝負、コロナ「5類移行」の危険な賭け 時宜を得た方針転換?政府対策本部も廃止へ

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ゼロコロナ政策を大転換した中国では連日、感染爆発による桁外れの死者数が伝えられている。それでも、春節休暇を利用しての中国からの訪日客は激増中で、政府が実施する水際対策も「効果は限定的」(政府筋)とみられている。

コロナ対策に苦闘した安倍、菅両政権でも、感染防止対策への国民の不安・不信が内閣支持率を低下させ、政権危機を招いた。それだけに、今回の岸田首相の「ウィズコロナ・経済再生」という“勝負手”は、「リスクと背中合わせの危険な賭け」(自民長老)ともいえる。

「平時の日本を取り戻す」と岸田首相

岸田首相がコロナ対策の大転換を表明したのは、通常国会開会目前の20日午前。加藤勝信厚労相ら関係閣僚を官邸に招集し、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、今春に現在の「2類相当」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ引き下げることを検討するよう指示した。

併せて岸田首相は、国民の間でも賛否が交錯するマスク着用の「ルール化」や、ワクチン接種などの公費負担の見直しを指示した。これにより、コロナ禍への対応は、社会経済活動の正常化に向けて3年ぶりに、大きな転換点を迎えることとなった。

岸田首相は指示の後、官邸で記者団に対し、「平時の日本を取り戻していくために、さまざまな政策、措置の対応について段階的に移行し、具体的な検討、調整を進める」と語った。これを受けて厚労省は、23日に感染症部会を開き、移行に向けた本格的論議をスタート。同日は、位置づけ変更に伴う論点整理を行った。

感染症法では、症状の重さや感染力の強さから、感染症を危険度の高い順に1~5類に分類している。コロナを最低の「5類」に引き下げた場合、入院勧告や医療費の公費負担は法律上の根拠を失い、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」などの対策も実施できなくなる。

マスク着用のルール化についても、政府部内では5類への引き下げに伴い、「屋内でも原則マスク不要」とする案が浮上。ただ、発熱などの症状がある人や、高齢者施設など感染リスクが高い場所に関しては、別途扱いを決める方向だ。

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