台湾で「日本産小麦のパン人気」裏に潜む大問題 「日本産というと売れる」という声の一方で・・・
ちなみにここ華山店は、「niko bakery」の製造拠点でもある。現在、2店舗ある店の商品はすべて華山店で作られ、1日に2回、支店へと配達するセントラル方式で運営している。
「日にもよりますが、1日に1000本くらい出ますね」
販売チャネルは店舗だけではない。公式サイトやLINE、Instagramから注文できる。店をオープンさせたのがコロナ禍で、お客さんから宅配の要望が多かったためだそうだ。
「ようやく外出できるようになって、店舗まで買いに来る人が増えました」。 取材中も、お昼時に重なったこともあってか、お客さんの数が途切れなかった。
そんな「niko bakery」を経営する武さんはフランスで2022年に行われた「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー 」というパンの世界大会で優勝した人物でもある。
今回の大会では初めて「自国で生産された材料を使用すること」という条件が出された。そこで台湾産の小麦、ごま、はちみつを使ったハードパンを作ったところ、審査員から高い評価を得たのだ。
小麦はすべてが台湾産ではない
今、実際に店で販売しているのも、優勝時の素材を生かして作った食パンだ。しかし、使われている小麦粉は台湾産ではない。
大会で使用した小麦粉は100%の台湾産だが、ハードパン用の粉で、最近人気の柔らかな食パンにはあまり適さない。そのため、店で使用している「台湾産」の小麦粉は、海外から輸入し、台湾でブレンドしたものだという。
100%純正ではないと聞いて驚くと、武さんは言う。 「日本もそうですよね。たとえば日本産と銘打っていても、実際には海外の小麦がブレンドされている。これまで、各国で小麦粉の工場を見学してきたので、すべて台湾産にするのは難しいことだと感じています」
その難しさはどこにあるのだろう。
「コストと生産量ですね。通常、ベーカリーで使う小麦粉は25kgの大きな袋のものですが、たとえば台湾ブレンドの小麦粉が1袋1800台湾ドル(約7200円)のところ、オール台湾産だと3000台湾ドル(約1万2000円)するのです。もっと生産量を増やして小麦粉の原価が下がらない限り、使用するのは厳しいと言わざるをえません」
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