現代日本人が「いつも時間に追われる」根本原因 文化人類学の視点で「あたりまえ」を考え直す

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忙しい現代人の「時間」を考え直します(写真:8x10/PIXTA)
いま、改めて「文化人類学」という学問に注目が集まっています。地球規模の環境変化が叫ばれている現代を生き抜くためのヒントが、文化人類学にあるのではないかと考えられているのです。
ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」と長らく行動をともにしてきた人類学者・奥野克巳による、現代社会の“あたりまえ”を考え直す書籍『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』から、文化人類学が「時間」というものをどのように捉えているのかを紹介します。

いかにして無人島で時間を理解できたのか

時間の本質について理解するのに、うってつけの映画があります。トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』(2000年)という作品です。

トム・ハンクス演じる主人公チャック・ノーランドは、運送会社のエンジニアとして、毎日、時間との闘いの中で仕事をしています。チャックには婚約者がいて、すぐ帰ると約束して貨物機に乗り込んだものの、嵐のせいで墜落事故に巻き込まれてしまいます。辛くも墜落を生き延び、彼は南太平洋の無人島に流れ着きます。生存者はチャック一人だけでした。時計もカレンダーもない無人島で、彼がどのようにして時間を理解しようとしたかというと、岩に過ぎ行く日々を刻みながら、日数の経過を知ったのです。

そして、チャックは次第に無人島の生活に適応していきます。バレーボールにウィルソンという名前をつけて、毎日、友人のように話しかけ、勇敢に生き抜こうとします。4年もの歳月を経て、やがてチャックは自力でいかだを作り、島を脱出します。脱出の試みの中で唯一の友であるウィルソンが海の彼方に流されてしまって失意の日々を送ったりするのですが、ついに通りかかったタンカー船に助けられ、待ち望んだ帰国を果たすのです。そうして、恋人に会いに行くわけですが、すでに恋人は他の男性と結婚していたのでした。

次ページ時間は本来、区切りのない連続体だった
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