その考えは正しかった。データを分析すると、3つの介入グループはすべて、燃費を向上させる行動をとっていた。
さらにうれしいのは、実験が行なわれているのは知っていても、介入群とおなじナッジを受け取っていない対照群のパイロットも、おなじように燃費を向上させる行動をとっていたことだ。
これは、おそらく環境の変化に伴って行動が変化するホーソン効果か、見られていることを意識した効果だろう(ホーソン効果とは、1920年代のホーソン工場の実験で、明かりを替えたことで作業効率が高まったことにちなんで名づけられた)。
ヴァージン航空のケースでは、単に燃料の使用量が計測され、われわれエコノミストにデータが送られると知らせるだけで、十分にパイロットが習慣を変えるインセンティブになった。産業心理学では、作業効率を向上させる手法としてホーソン効果が活用されているが、まさにパイロットでその効果が確認できたわけだ。
「実績」「明確な目標」「目標達成を促す」が最強
ナッジを適用した3つの介入グループのなかで、最大の効果があがったのは、前月の実績に加えて、明確な削減目標を示し、目標達成を促すメッセージを受け取った第2のグループだった。燃費向上効果は、前月の実績だけを知らされたグループを28%上回っていた。
これはあたかも、目標を達成できないかもしれないという可能性だけで、パイロットは燃料を節減し、体面を保つようになる、つまり自分自身を期待に応え、規範を守る人間として見ることができるかのようだった。
興味深いことに、慈善団体への寄付という追加的なインセンティブには効果がなかったようだ。平均すると、寄付に関するメッセージを受け取ったパイロットが、削減目標と奨励の手紙を受け取ったパイロット以上に燃費を節減したとは言えない。寄付がなくても、インセンティブの効果は最大になっていたのだ。
総合すると、実験の結果、ヴァージン航空が節減した燃料は7700トン、燃料費は537万ドル、削減した炭素排出量は2万1500メトリックトンにのぼった。
うれしいおまけとして、機長たちがこの実験を気に入り、79%がこうしたイニシアチブにもっと取り組みたいと回答した(そうしたくないと答えた割合は、6%にとどまった)。さらに、対照群にくらべて介入群の機長は、仕事の満足度の向上も見られた。
(翻訳:高遠裕子)
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