ホワイトハウス、ドミニカ共和国政府といった公的部門の課題解決に関わり、ウーバー、リフト、ヴァージン・アトランティック航空などの企業にも参加して経済学の実装に貢献してきたシカゴ大学教授のジョン・A・リスト氏。
ノーベル賞にも近いと見なされている彼の最新刊『そのビジネス、経済学でスケールできます。』が翻訳出版された。世界をよりよい場所にするために、大小さまざまなアイデアを規模拡大(スケール)する重要性について、同書から抜粋・編集してお届けする。
ウーバーからの打診
2016年にウーバーの人材採用担当から、新たに創設するチーフ・エコノミストの採用面接を受けてほしいとの連絡が入った。
しかしわたしは即座に断った。
2016年の夏、わたしは自身のキャリアでも特に野心的なプロジェクトで多忙をきわめていた。
それまで数年にわたってシカゴハイツという地域で取り組んでいた教育改善の研究成果を元に、全米、さらには諸外国に拡大できる、新しい教育カリキュラムのモデルを構築しようとしていたのだ。
すでに目いっぱいの毎日で、これ以上は荷が重い。そのうえ私は再婚を間近に控えていた。8人の子どもたちに2人の祖父母。新生活は、幸せながらも、しっちゃかめっちゃかになるだろう。
それに幼児早期教育に関するわたしの研究が、ライドシェアで世界制覇をもくろむシリコンバレーの会社とどんな関係があるというのか。
だが、この件について考えれば考えるほど、わたしの研究プロジェクトとウーバーには、共通する一つの大きな目標があることに気づいた。
「スケール」だ。
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