経済学者の私がウーバーで働くことになった理由 幼児教育とライドシェアに共通したテーマとは

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プレゼンテーションを始めると、部屋にいた5人の幹部のうちの1人が、ひっきりなしに口を挟む。Tシャツとジーンズの若造で、両側のこめかみに白髪が見え始めている。

数分して、彼こそが39歳のウーバー創業者、トラヴィス・カラニックなのだと気づいた。

トラヴィスの印象は強烈で、これまで出会った誰よりも自信家だ。

それもむべなるかな。自分のアイデア、そして何より自分自身の直観に自信がなければ、世界中の都市交通を一変させ、わずか7年でスタートアップ企業を売上高660億ドルの大艦隊に育てることなどできまい。

45分にわたる押し問答の結末は

たしかに彼には魅力がある。だが、念入りに準備してきたパワーポイントのスライドをなかなか先に進めさせてくれないのにはほとほと困った。

損失回避に関する研究について話していると、会議室の後ろからトラヴィスは1分おきに質問をしかけてくる。獲物にとびかかろうとするライオンのように。

ちなみに損失回避とは、行動経済学者が好む概念で、損失が意思決定を左右する強力な動機になる理由を解き明かす。

他のエコノミストが、面接を突破できなかった理由がわかってきた。

「それは腑に落ちない」。中国の工場でわたしが行った実験について、トラヴィスはまた口を挟む。わたしは彼の間違いを指摘し、その理由を説明した。

クリックして次のスライドに移り、別の実験について説明し始めると、またもや遮られ、異議を唱える。わたしは再度、彼の見方がどうして間違っているかを説明した。

こうして約45分にわたって、軽い押し問答が続いた。彼がジャブを繰り出し、わたしも応酬する。どちらもダウンしない。そうして、ようやく打ち止めになった。わたしは全員と握手して会議室を後にした。

「残念ながら時間の無駄だった」、ロビーに戻りながら、そう思っていた。

エレベーターに乗ろうとしたところで、会議室にいた幹部の1人が慌ただしく追いかけてきた。

「待ってください」

エレベーターを止めながら、幹部はこう言った。「おめでとうございます。あなたを採用したい」

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