2016年には、シカゴハイツの何気ない光景に秘密が隠されていることに気づいていた。子どもの教育上の成果向上を目的としたわたしの研究は、スケーリングについての研究でもあった。
うまくいくときもあれば、うまくいかないときもあった。
ウーバーのような会社、超速で事業を拡大し、70カ国、1億人近い顧客にサービスを提供する会社で働けば、他でも応用できる新たな知見が得られるかもしれない。そう思った。
ウーバーのオフィスで目にしたもの
ウーバーが膨大なデータをもっていることも知っていた。わたしのようなエコノミストにとって、ビッグデータはただの飯の種ではない。プロとしての遊び場だ。
ウーバーは、顧客の自宅の色や、男女が後部座席のどちら側に座るか、乗客間の友人関係まで把握していると噂されていた。
これらのデータにはスケーリングの秘訣が隠れていて、なかには私自身の学問研究に活かせるものがあるだろう。にわかに、ウーバーで働くというアイデアがそう突拍子もないことではない、と思えてきた。
それに、わたしはチャレンジが好きだ。ウーバーの採用担当者からは、すでに何人かのエコノミストを面接したが採用には至らなかった、あなたも採用される保証はない、と脅かされていた。ならば受けて立とう。
こうして、わたしは面接を受けにシカゴからサンフランシスコに飛んだ。
当時、ウーバーのグローバル本部が入居していたマーケット・ストリート沿いの堅牢な建物のドアを潜り抜けエレベーターで上階に向かうと、慌ただしく会議室に通された。
オフィスの柱に書かれているスローガンが目にとまった。「データこそ、わが社のDNA」
データをこれほど尊重するのは、象牙の塔だけだと思っていた。わたしは天国に来たのだろうか。ここでは、間違いなく、わたしの言葉が話されている。このフロアにいるだけで、平均的な企業よりも科学的に物事が進められているのはすぐにわかった。
だが、面接が始まると、ホームに居る感覚はなくなった。
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