経済学者の私がウーバーで働くことになった理由 幼児教育とライドシェアに共通したテーマとは

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
拡大
縮小

ウーバーのチーフ・エコノミストとしての任期がほどなく始まった。

こうして、まったく異なる二つの世界─経済学のフィールドワークでの長年のアカデミックなキャリアと、高速で進む21世紀のビジネスでの新たなキャリアが、わたしのなかで交わることになった。

すべての素晴らしいアイデアに共通していること

二つの世界が収斂したことで、わたしの理解は格段に深まった。データを活用して実社会でアイデアの実現可能性をどう評価するのか。さらに、そうしたアイデアをスケールアップし、飛躍的に多くの人々に届けるにはどうすればいいのか。

ウーバーは事実上、スケールの科学を研究するための新たなラボになったのだ。

アセモグル/レイブソン/リスト 入門経済学
『アセモグル/レイブソン/リスト 入門経済学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

わたしたちが設立したシカゴハイツ幼児センターは素晴らしいアイデアだ。ウーバーもまた素晴らしいアイデアだ。

他のさまざまな領域でも、素晴らしいアイデアは無数にある。だが、良いアイデア、あるいは素晴らしいアイデアが、完全に実を結ぶという法則はどこにもない。

じつは、すべての素晴らしいアイデアに共通しているのは、成功する保証はない、ということだ。

医学上の画期的発見、消費財、技術革新、政府のプログラム、その他のどんな事業も例外なく、当初掲げた目標から広範な影響を及ぼすまでに至るには必要なことが1つある。

「スケーラビリティ」、つまり、力強く持続可能な形で成長させ、拡大する能力だ。簡潔に言えば、スケールがあって初めて世界を変えることができるのだ。

(翻訳:高遠裕子)

ジョン・A・リスト シカゴ大学経済学部ケネス・C・グリフィン特別功労教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

John A. List

シカゴ大学経済学部ケネス・C・グリフィン特別功労教授。大統領経済諮問委員会(CEA)でシニア・エコノミストを務めた。ケネス・ガルブレイス賞をはじめ、数々の栄誉ある賞に輝く。その業績は以下の各媒体で紹介されている。ニューヨーク・タイムズ、エコノミスト、ハーバード・ビジネス・レビュー、フォーチュン、NPR(米国公共ラジオ放送)、スレート、NBC、ブルームバーグ、ワシントンポスト等。250本以上の査読済み学術論文、数点の学術書を執筆。ウリ・ニーズィーとの共著で世界的ベストセラーの『その問題、経済学で解決できます。』(望月衛訳、東洋経済新報社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT