運動が脳を鍛え、うつ退け、集中力上げるカラクリ 『運動脳』著者アンデシュ・ハンセン氏が明かす

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――どれくらいで脳の変化が実感できますか?

1カ月後ぐらいには表れると思います。

――運動にはデメリットはないのでしょうか。

たとえばアイアンマン(レース)のように、10時間、12時間と走り続けるような極端な運動は、脳にとってよくない可能性があります。マラソンくらいまでなら問題ないと思います。繰り返しますが、週に3回、毎回45分、汗をかく程度の運動をすれば、脳への効果は十分に得られます。それ以上やっても、心肺機能は高まりますが脳へのプラスの効果は得られません。

――運動嫌いの人もいます。

私は、現代社会が犯した大きな過ちは、運動とスポーツを一緒にしてしまったことだと思っています。運動はスポーツとは何の関係もなく、私たち人間にとって本質的に必要なものです。私はむしろ「私は運動が得意ではないから……」というような人たちに対してこそ、こう伝えたいんです。マラソンのようなことをする必要はありません。定期的にウォーキングするだけでいいんです。これまで何も運動をしていない人が少し体を動かすことで、効果が生まれるのです。

人間は怠け者になるように進化してきた

――体を動かすことが大事でも、なかなか続けられない人が多いです。

運動がつらいのは、私たちは怠け者になるように進化してきたからです。

運動脳
『運動脳』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

人間はほぼ全歴史上、全人類の半分が10代になる前に亡くなっています。私たちは、10代になる前に死ななかった人たちの子孫ということになります。彼らの死因はがんや心臓血管病ではなく、飢えや脱水、感染症などです。それらから命を守るため、人は生きるためにはカロリーをたくさん摂取してきました。そして、そのエネルギーをムダにせず、じっとしていることが大切でした。

実際、私たちは自分が動かなくていいようにいろいろなものを作ってきました。エレベーターを作り、電動スクーターを作り、怠け者のために食べ物を玄関先まで配達してくれるようになりました。これは私たちが本能的に怠け者だからです。

――なるほど。でも、現代人には運動が必要、ということですよね。

だから、あまり考えずに運動できる工夫が必要です。例えば、通学や通勤時に歩くとか、昼休みに体を動かすとか、できるだけ階段を使うとか、そういうことです。日常生活のなかに運動、体をちょこちょこと動かすことを取り入れることが大切なのです。

山内 リカ 東洋経済オンライン 編集者
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