その結論は、日本の中で本当にすごいのはトヨタだけというものでした。日本的経営ではなく、トヨタ的経営と言うべきだったんだと改めて思います。
ほかにいい会社はないのかと、ずっと見て歩いたのですが、実際に行く先々で、本当にこれが日本企業の姿なのか、これじゃ駄目じゃないかと、つくづく思いました。
そうした現実が見えてくる中での2000年代は、私の中ではネガティブの時代、日本企業の悪いところをとことん見てやろうという10年間になりました。
驚くべき乱暴な経営の実態
私は2004年に『戦略不全の論理』、2007年に『戦略不全の因果』、2010年に『戦略暴走』と3冊の本を出していますが、特に3冊目の『戦略暴走』を書いている時は、気持ちが暗くなりました。
これは、石橋をたたいても渡らないと言われるほど慎重な日本企業が、いかに乱暴な経営をしているか、そして、何年分にも相当する営業利益を特別損失という形でドブに捨てているかを見た本になります。
一般には、ケチでお金を使わない、昼休みには蛍光灯を消すなど節約には余念がないと言われていた日本企業が、あちらの事業で3000億円、こちらの事業で2000億円と暴走して、金をドブに捨てるようなことをしている。これは信じられない姿でした。
世の中で言われることに踊らされず、現実をきちんと見るとこういうことだと自分なりに把握した後、私はギアを切り替えました。
さはさりながら、トヨタの他にも、真っ当な経営をしている会社はあるに違いないと。
そうして2010年から次の10年間は、隠れた日本の宝にあたる会社を発掘してやろうと決めて、研究に立ち向かいました。
今回完結した『経営戦略の実戦』シリーズの第1巻では、利益率(事業利益率)という物差しを用意して、10年間にわたって利益率が10%を超えている事業セグメントを総ざらえしました。
これがシリーズ第1巻の『高収益事業の創り方』という本です。
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