御社の「負け犬」事業を高収益に変える一手とは 成功企業に学ぶリ・インベンション5パターン

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ここから明らかなように、大きな予算を獲らなくてもリ・インベンションには挑戦できる。また、相対的に時間もかからず、国内市場で伸びたケースが居並んでおり、まさに成熟の時代を生きる道と言えよう。

ただし、強力なリーダーと非凡な発想が必要にして不可欠なので、大企業が挑戦する場合は別働隊を社外に出すなどの工夫を凝らすよう推奨しておきたい。

「売り物」のリ・インベンションで成功したケース

「売り物」のリ・インベンションで成功したケースとして本書で取り上げたのは、以下となる。

ホクト(ブナシメジ・エリンギ、18.1%)
ツツミ(ジュエリー、17.9%)
ファーストリテイリング(カジュアル衣料品、16.5%)
アドヴァン(輸入石材、23.9%)
因幡電機産業(配管化粧カバー、19.3%)
日東工器(タガネなど、15.4%)
ホギメディカル(手術室用着衣&用品キット、24.6%)
アリアケジャパン(畜肉エキス、22.4%)
藤倉ゴム工業(ゴルフクラブ用カーボンシャフト、12.5%)
サニックス(白蟻防除薬剤・吸湿剤、21.1%)
ファンケル(無添加化粧品、16.7%)
* %の数字は、売上高営業利益率の期間中加重平均を指す。対象企業の選別法などについては書籍を参照
成熟市場で「売り先」を大胆に変える2パターン

成熟市場で「売り先」を大胆に変えるには、事業活動の出口を従来とは大きく異なる方角に求めるのがよい。

その具体的な手口として、本書では次の2つのパターンが浮上している。

(1)当該事業の本場と呼ぶべき大市場に勝負を懸ける
(2)川下の新たな集積地に新規の顧客を求める
『高収益事業の創り方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

いずれの場合も競合他社の多くは日本に籠城して、川下の顧客と一緒に先細りする道を歩むため、リ・ディレクションに踏み切った企業には好機が巡ってくるのである。

リ・ディレクションは特に大企業に親和性の高い事業戦略である。6ケースでは売上高が1000億円を超えている。

一方で、本書の分析では、強いリーダーの存在を示唆しており、拙著『経営は十年にして成らず』で描いた強い操業経営者の独壇場となっている。

「売り先」のリ・ディレクションで成功したケース

「売り先」のリ・ディレクション(大変更)で成功したケースとして本書で取り上げたのは、以下となる。

信越化学工業(塩化ビニル樹脂、13.8%)
シマノ(自転車部品、16.8%)
クボタ(農業機械、13.7%)
HOYA(眼鏡レンズ、17.6%)
スミダコーポレーション(巻線コイル、13.1%)
JSR(フォトレジスト、20.4%)
住友ベークライト(エポキシコンパウンド、19.4%)
* %の数字は、売上高営業利益率の期間中加重平均を指す。対象企業の選別法などについては書籍を参照のこと
三品 和広 神戸大学大学院教授

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みしな かずひろ / Kazuhiro Mishina

1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て現職。著書多数。経営幹部候補生のために、日本企業のケース464事例を収録した『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)が2022年5月に完成した。

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