定跡は、既存の競合他社と勝負せず、土俵を変えることを要求する。そこには大きく分けて「売り物」を微妙にずらす手と、「売り先」を大胆に変える手の2通りがある。
本書の分析結果は、ほぼ2:1の比で前者が優勢であることを示しているが、製造業に限ると比は1:1に近くなる。いずれにせよ、意志の力で狙って舵を切ることである。
ちなみに、本書第1部の成功ケースは過半が「隣地開拓」で成功している。
どの業種カテゴリーにも該当するケースがあるので、遅発のプレーヤーにとって「隣地開拓」は一様に有力な戦略オプションと考えてよい。
成熟市場で「売り物」を微妙に変えるには、拙著『リ・インベンション』に詳述したアプローチが有力である。
「売り物」のリ・インベンション
リ・インベンションとは、すでに存在するモノやサービスを新たな時代に照らし合わせながら、一から作り直すことをいう。
その具体的な手口として、本書では次の3つのパターンが浮上している。
(2)さらに歩みを進めて規格工業産品を顧客に合わせてマスカスタマイズしてしまう
(3)一部の顧客から見れば非合理ながら長らく業界を支配していた必要悪を取り除いてしまう
この3パターン以外に未知のパターンが息を潜めている可能性はなきにしもあらずだが、上記3パターンは明確に見えており、具体的な検討の出発点になりやすい。
リ・インベンションは応用可能性の高い戦略である。ここに登場する11ケースのうち、9ケースまでベンチャーの手になるもので、残る2ケースも社内ベンチャーにあたる。
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