「高齢者を雇う側、雇われる側」が気をつける点 指導・監督することも「管理者の役割」の1つ

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加えて、精神的な問題も対策が必要となります。加齢に伴い、どのような人でも判断力や適応力、記憶力が低下していきます。ここで問題になるのは、個人によって低下のばらつきが大きく一律に対策が立てづらいこと、性格によっては頑固にこうした能力の低下を認めないために周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなってしまうことにあります。

近年の業務は機械化やオンライン業務がさらに普及しており、次々とアップデートされる機械の操作や、オンラインミーティング用のパソコン操作についていけないと感じている方も少なくありません。また、再雇用された際に、ずっと年下の方から新人として指導を受ける立場になることに、やりづらさや話題の合わなさを感じる方もいらっしゃいます。

業務を「楽に」する対策

しかしながら、事業者が雇用を決めた以上、こうした高齢者を指導・監督することも管理者の役割のひとつといえます。

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身体的な問題への対策としては、急激な姿勢の変化のある業務や暗い場所での業務、ベルトコンベアなどの操作が時間に追われる業務は避けましょう。重いものを持つ必要がある際も、身体に密着させて持つことで負担をかなり軽減することができます。

業務を「楽に」する対策は高齢者だけでなく、職場全体の作業環境を良くするきっかけになります。身体的に弱い方が業務を行ってみることではじめて浮き彫りになる問題もありますので、ぜひ高齢者だからという理由だけでなく、働く人すべての安全と業務の効率化のために対策をしていただけたらと思います。

さらに、始業時に全体で軽い体操やストレッチを取り入れることで、基礎体力作りだけでなくコミュニケーションの向上を狙うこともできます。なお、長期的な対策としては、加齢による身体の変化は生活習慣病の予防などによってある程度防ぐことができますので、高齢になってからではなく、就業開始年齢から健康診断などを通じた啓発やフォローが重要といえます。

精神的な問題には、やはり指導にじゅうぶん時間を割くことが大切です。高齢者に限ったことではないですが、これくらいのことができて当たり前と思わずに指導を行いましょう。一人ひとりの特性に合わせた指導ができれば理想的ですが、ビデオ等で作業の手順を繰り返し確認できるようにする、新しい作業に移るときも今までできていたことと関連したものにするなど、少しの工夫で指導側も高齢者側もぐっと働きやすくなります。

また、高齢者として働く方向けのアドバイスとしては、年功序列や上下関係にとらわれすぎず、いまご自身が何をすれば職場チーム全体の助けになるのかをつねに考えていただければと思います。

加齢に伴い、身体的・精神的問題が現れることは誰しも避けることはできません。しかし、働くことで自尊心や自己肯定感が高まり、身体の健康にもつながります。年代だけに捉われず、個人の特性に合った働き方ができるような社会に、少しでも近づくことを願っています。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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