ネット依存ではほとんどのケースで親が同伴するが、親の前だと子どもが本音を言えないこともあるので、それを補うために、診察後に心理の専門家が本人へのカウンセリングを行う(親は立ち合わない)。
一方、外来に子どもを連れてこないで、親だけが相談しにくるケースもある。樋口医師の外来では3分の1がそうだという。その場合は親ができることを考えるなどして、医師として改善の方向性を示していく。さらに、同院が定期的に開催している「家族会」や「家族ワークショック」といった、参加者が意見交換や情報共有できる機会や場を紹介する。
これらは依存から抜け出せない子どもを抱える、家族のメンタルケアの重要な場となっている。どこに相談していいかわからず悩んでいる人は一度問い合わせをするといいだろう。
外来では問診の後、医師の診察と心と体の検査が行われる。心の検査では、うつや発達障害、社交不安(対人関係に対する不安)があるかどうかを、体の検査では血液検査や骨密度検査、心肺機能検査で、栄養状態や体力の低下の程度などをみていく。
「ゲームやネット依存、スマホの過剰使用では、背景に心の問題が関係していることも多々あります。発達障害(とくにADHD)や、その傾向がある子の割合も高いです。こうした子たちは衝動のコントロールが苦手なので、依存になりやすいのです」
と樋口医師。検査結果を本人に提示することで、「単なるゲームのやりすぎ」ではなく、「このままではまずい」と自分の状態を客観視することができるため、治療のモチベーションにつながりやすいという。
治療は心理療法の1つである認知行動療法をペースにしたもので、全8回のセッションで構成される。毎回ゲームにかかわるテーマを取り上げ、自身の認知のゆがみやくせを客観視し、悪循環が起きているサイクルや、悪い習慣を見直すことで行動変容を目指す。これは外来でも入院でも、デイケア(通所リハビリテーション)でもでき、集団が苦手な子の場合は個別治療も可能だ。
8泊9日「治療キャンプ」とは?
このほか同院が2014年から実施しているのが、8泊9日のネット依存「治療キャンプ」だ。1週間ほどネット環境から離れた状態でキャンプを行い、規則正しい生活をしたり集団生活を体験したりする。単に楽しむだけでなく、ネット依存について学ぶ場や認知行動療法を行うプログラムが用意されているほか、家族への支援も行っていく。
特徴は、教育系か心理系の大学生のボランティアスタッフがメンター(指導者・助言者・支援者など)としてつき、キャンプ期間は寝食を共にしながら傾聴を続ける点だ。
参加者は平均年齢18歳で、同院がキャンプ直後と3カ月後のインターネットの使用に関して調査したところ、使用時間が1日の平均で2~3時間減少していた。参加者の家族が話すキャンプ前後の変化では、「食事を3食、食べるようになった」「早く起きるようになった」「家の手伝いをするようになった」「学校に行けるようになった」「家で勉強するようになった」「キャンプ前よりも会話が増えた」との声があった。
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